骨粗しょう症のリスクが高まる

また、ビタミンDの不足が骨の形成に影響を及ぼすことは想像に難くないでしょう。骨はコラーゲンでできた土台にリン酸カルシウムが沈着(石灰化)して形成されるため、ビタミンDが欠乏すると石灰化がうまく進まず、小児ではくる病、成人では骨軟化症となる可能性があります。また、欠乏まではいかなくとも不足することで、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まります。それぞれ説明しましょう。

女性の骨格
写真=iStock.com/angelhell
※写真はイメージです
くる病

子供の時にカルシウム・リンが骨に沈着(石灰化)する量が少ないために、骨が弱くなる病気です。骨が弱く軟らかくなることで正常に成長しなくなります。そのため、足が曲がってO脚やX脚になる、身長が伸びにくい、などの症状が出ることがあります。

骨軟化症

骨が成長した後の成人に起こる病気です。くる病と同じく骨や軟骨の石灰化がうまくできていない骨の割合が増えることで起こります。

骨が軟らかいままになり、骨の痛み・骨折、筋力低下などの症状が出ることがあります。

摂りすぎると「高カルシウム血症」や「腎障害」の危険

ここまででビタミンD不足の怖さはよくお分かりいただけたと思います。もともと不足しがちな栄養素であるため積極的に確保することをお考えいただきたいですが、実はビタミンDは摂りすぎた場合にも悪影響があることが分かっています。

ビタミンCなど水溶性のビタミンが過剰摂取された場合には尿で排出されるのに対し、ビタミンDは脂溶性=水に溶けにくいビタミンであるため摂りすぎた分も体内に留まり、過剰な場合には高カルシウム血症や腎障害を引き起こしてしまうことがあります。通常の食生活でこのようなことはなかなか起こりませんが、ビタミン剤を利用して摂取をする際などには注意が必要です。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンDの耐用上限量(過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量)を成人・高齢者では100μg/日としています(※3)

(※3)厚生労働省「「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

では、適切にビタミンDを確保するにはどうしたらよいのでしょうか。

方法は先述の通り2つあります。1つは日光紫外線の刺激を受けて皮膚で合成する方法。もう1つは食物から摂取する方法です。