※本稿は、高橋克英『地銀消滅』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。
日本人富裕層もニセコの投資に参戦
北海道のニセコでは、パウダースノーを求める外国人による外国人のためのホテルコンドミニアムなどが数多くあり、コロナ禍では、日本人の富裕層からの注目も高まっている。
五つ星ホテルのパークハイアットがあるのは、日本では東京、京都、ニセコのみである。リッツ・カールトンが2020年12月に開業し、さらにアマンの建設も進行中だ。
この先も、巨大な外資系資本による大規模開発は目白押しであり、2030年の北海道新幹線の新駅開業、高速道路の開通だけでなく、札幌オリンピックの会場となる可能性もあり、ニセコの未来は輝いている。
世界的な金融緩和策もあり、国内外の富裕層が集まり、良質なホテルやコンドミニアムなどが供給されることでブランド化が進み、資産価値の上昇によって、さらなる開発投資がおこなわれている。投資が投資を呼ぶ好循環が続いているのだ。
例えば、高級ホテルコンドミニアムの「パークハイアットニセコHANAZONOレジデンス」は、一戸1億円以上もする高額物件ながら、全113戸のうち、半数以上が日本人による所有だという。豪州やアジアの富裕層が中心だったニセコの高級ホテルコンドミニアムへの投資に、日本人の富裕層も参戦しているのだ。
日本の銀行にはリゾート物件に対応するローン商品がない
購入者はどうやって、億単位の資金を用意したのだろうか。個人の戸建てやマンション購入、また不動産投資の場合、その多くは、銀行を利用してローンを組むことになる。住宅ローン、アパートローン、不動産投資ローンといった商品だ。
しかし、「パークハイアットニセコHANAZONOレジデンス」の場合、こうした銀行のローン商品を利用したケースは、皆無だという。ニセコ地区の他の高級コンドミニアムや別荘の販売においても同じだ。
唯一、新生銀行や東京スター銀行が、外国人向けのローンなどで一部対応をしているというが、メガバンクや地銀によるファイナンスは基本的にないという。
補足ながら、所有不動産や上場株式や預金を担保にした、担保ローンは存在するが、これは自己資産を担保にしており、キャッシュで買うのと大差はない。
「そりゃあ富裕層なんだから、みんなキャッシュで一括払いなんでしょう」と思うかもしれない。確かに結果的にはそうだ。しかし、富裕層にとってもキャッシュは虎の子だ。できるだけ現金を使わずに、借り入れすることで、レバレッジを効かせたり、節税対策にもなるからだ。
では、どういうことか。銀行からローンが下りないのだ。正確には、日本の銀行にはこうしたリゾート物件に対応するローン商品や審査体制がないのである。