天才社会学者のメモ術「ツェッテルカステン」

いよいよ、このシステムの中心にあるツェッテルカステンについて知りましょう。ここではざっとルーマンが使ったツェッテルカステンがどういう原理なのか知っておきましょう。

ルーマンは2種類のツェッテルカステンの箱を使い分けていました。

箱のひとつはメインのツェッテルカステンです。もうひとつは、それの補助的な役割をする文献管理用で、参考文献と、その内容に関する短いメモが入った箱です。

どちらの箱に入るメモも、インデックスカードに書き、木の箱に保管していました。ツェッテルカステンとは、この箱とメモのことをいいます。

ルーマンは、読書をしてメモをとるときは、書誌情報をカードの片面に書き、自分のメモをその裏側に書いていました。これは、短く書くことが大切です(Schmidt 2013)。これらのメモは、ゆくゆくは「文献管理用」のツェッテルカステンに収まります。

空白の索引カード
写真=iStock.com/Pictac
※写真はイメージです

そのあと、いよいよメインの箱を使います。まず、文献管理のメモに入る短いメモや、その他にとった走り書きのメモを見直します。それから、それらを元にメインのツェッテルカステンに向かい、また新しい紙に書き直します(つまり、文献管理に入るものと重複します)。ツェッテルカステンに入れるメモを書くときのコツは、すでにあるメモと、この新しいメモにどのような関連性があるかを考えることです。

1枚のアイデアには1枚の紙を使います。書くのは片面だけです。こうすることで、箱から出さずにあとで読み返しやすくなります。

通常はひとつのアイデアが1枚に収まるように十分に短くしますが、思考を広げたい場合は、その紙の後にもう1枚メモをつけ足す場合もありました。

たいていの場合、新しいメモは前のメモに直接続き、連続した長いメモの一部になります。そして、必要に応じて、新しいメモとこれまでのメモにリンクを追加しました。

リンクは、隣り合って置かれているメモに貼る場合も、まったく異なる分野や文脈に分類されたメモに貼る場合もあります。リンクがひとつも貼られずに終わるメモはめったにありません。

自分の言葉で書くのがポイント

ルーマンは読書の内容からアイデアや言葉をただそのまま写し取るのではなく、ひとつの文脈から別の文脈に移し替えるようにしていました。つまり、できるだけ原文の意味を維持しつつ、自分自身の言葉を選んでいくという作業です。そうすることで、自分の状況や文脈に合った内容に生まれ変わります。

もとの文の内容をただ引用するよりも、消化して自分のものにしたほうが、メモとしてはるかに価値があります。よくあるメモのとり方は、トピック別に整理することですが、ツェッテルカステンでは一切それをしません。その代わり、固定の番号を振るという方法で整理します。