不倫告白の投稿後、彭帥さんは消息不明となった

中国の前の副首相との関係を告白したのち、行方が分からなくなっていると伝えられている女子テニス選手・彭帥(ポン・シュアイ)さん(35)について、国際オリンピック委員会(IOC)は11月21日、トーマス・バッハ会長がテレビ電話で30分間にわたって話し、「無事を確認した」と発表した。

中国の女子プロテニス選手、彭帥さん(右)とテレビ電話で会話する国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長=IOCウェブサイトより
写真=©IOC/Greg Martin
中国の女子プロテニス選手、彭帥さん(右)とテレビ電話で会話する国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長=IOCウェブサイトより

IOCの発表によれば、彭さんは「北京の自宅にいる。安全で健康だ」と説明したうえで、「いまは私のプライバシーを尊重してほしい。友人や家族と過ごしたい」と話したという。さらにバッハ会長は、北京オリンピック開催前の来年1月に北京市内での夕食に彭帥選手を誘い、本人も受け入れたという。

彭さんは、自分のSNSのアカウントに「(中国の)元政府高官と不倫の関係にあった。性的関係を強要されたこともある。彼が天津市の首長だったときに関係ができた。彼からは引退後に再び連絡が入り、テニスをした後、彼の自宅で再び関係を持った」という投稿後、消息不明となり、安否が心配されていた。

「家で休んでいるだけ」というメールを公開したが…

事実関係をあらためて振り返ってみよう。11月2日、彭さんは中国版ツイッターの微博(ウェイボー)の個人アカウントで、張高麗(ジャン・ガオリー)前筆頭副首相(75)と不倫関係にあったと投稿した。すぐにアカウントは削除されたが、この話題はネット上に拡散した。

中国外務省の汪文斌(ワン・ウェンビン)副報道局長は翌日3日、投稿の内容について「私は聞いていない。これは外交問題ではない」と強調した。

張氏は2012年~2017年にかけ、習近平(シー・チンピン)政権の最高指導部メンバーである中国共産党の政治局常務委員を務めた政府高官だ。一方、彭さんは2013年のウィンブルドン選手権と翌年の全仏オープンの女子ダブルスで優勝し、ダブルスでは元世界ランキング1位という著名選手だ。

元政府高官と著名女子テニス選手の不倫関係。普通の国であれば大騒ぎになる事案だが、中国国内では告白騒動はまったく報道されず、ネット上の関連情報もすべて遮断されている。

さらに中国国営中央テレビ(CCTV)系列の中国国際テレビ(CGTN)は、彭さんのものとするメールをツイッターで公開した。そこには「私は行方不明ではなく、安全でない状況でもない。家で休んでいるだけで、全て順調だ」と記されている。

こうした中国当局の説明を信じることはできない。中国は香港や新疆しんきょうウイグル自治区での人権弾圧が国際問題になっている。人命を軽視し、党や国家を重視するのが中国にとって当然の行為なのだ。それだけに彭さんの安否が懸念される。