その正体はプーチン政権の「別動隊」
これが事実なら、ロシアのハッカー集団は政府機関の「別動隊」であり、プーチン政権は国策として活動を認めていることになる。
「情報機関のFSBなどは、犯罪行為で検挙されたハッカー集団のメンバーを処罰せず、工作要員としてリクルートしたり、カネで雇ったりしている。FSBは現実空間の工作でも、犯罪組織を活用しており、そこに驚きはない」[古川英治『破壊戦 新冷戦時代の秘密工作』(角川新書)2020年、31ページ]
米有力紙ニューヨーク・タイムズ(7月31日)は社説で、ロシアのハッカー集団を「世界に脅威を及ぼす新形態の組織犯罪」と形容し、「早急に阻止しなければ、さらなる膨張を招き、米国や世界のデジタルインフラに大打撃を与える。他の独裁国家のサイバー犯罪シンジケートを助長してしまう」と書いた。同紙は、「プーチン大統領もサイバー犯罪の共犯者」と断定している。
五輪期間中も攻撃されなかった日本は…
ロシア発のサイバー攻撃は、今のところ日本本土にはあまり及んでいない。ロシアのハッカー攻撃が危惧された夏の東京五輪について、加藤勝信官房長官(当時)は閉幕後、「運営に影響するサイバー攻撃はなかった」と述べた。
2016年のリオ夏季五輪や2018年の平昌冬季五輪には、ロシアなどからのサイバー攻撃があり、システムの不具合が生じたが、東京五輪中は静かだった。
10月の衆院選でも、外国のサイバー干渉はなかった。メルケル首相の後任を決める9月のドイツ総選挙では、選挙前からロシアのサイバー攻撃が激しく、ドイツ政府や欧州連合(EU)がロシアの「違法な選挙干渉」を非難していた。
ロシアが日本にサイバー干渉をしない背景に、日本の政治的・経済的影響力の低下があるとすれば、これはまた別の問題である。