自分のダメなところこそ、受け入れていく

私のクリニックには、オープン当初から事務部門を担当してくれている、Kちゃんという女性がいます。彼女は努力家で、偏差値の高い学部を出ているのに、なかなか自分を肯定できずにいました。

そして、非常に優秀で事務遂行能力も高いのに、「いい感じにポンコツ」で、1~2カ月くらいに1回のペースで、なかなか刺激なポカをしてくれます。

たとえば、クリニックのオープン当初にKちゃんが作ってくれた、あらゆる書類作成のベースとするためのマスターデータの電話番号や口座番号が違っていて、不備書類が量産されたことがありました。

Kちゃん自身はもちろん恐縮しまくり、謝りまくっていましたが、誰も彼女を責めず「またKちゃんらしいやつ、出たねー」と笑っていました。

ミスやポカを隠さずオープンにし、お互いにそれを責めたりせず、むしろ慈しむ。そんなコミュニケーションを繰り返していった結果、いくら努力しても自分に自信を持てずにいたKちゃんも、最近は「以前より生きるのが楽になった」と感じてくれているようです。

DWD病を克服するために必要なのは、自分の欠点や弱さを否定するための努力ではありません。ときには、信頼し安心できる他人の力を借りながら、自分の「ダメなところ」を少しずつ受け入れていくことです。

「あなただけの物語を生きてほしい」

「ダメなところも、自分の一部だ」と感じられるようになることで、「だから私はダメなんだ」と落ち込んだり、世間からの評価に一喜一憂したりすることが減り、生きやすくなっていくでしょう。

鈴木裕介『我慢して生きるほど人生は長くない』(アスコム)
鈴木裕介『我慢して生きるほど人生は長くない』(アスコム)

そのプロセスは「自己受容」と呼ばれ、非常に難しいことでもありますが、自分の「ポンコツさ」「人間味」の部分をありのまま認めてくれたり、面白がったりしてくれる人たちとすごすことが大きな助けとなります。

そうした人たちとの時間を増やしていくことで、これまでに起こってきた出来事の解釈も少しずつ変わっていくでしょう。

自己を受容していくこと。それこそが、世界に二つとない、あなただけの物語を生きることなのだと、私は思うのです。

拙著『我慢して生きるほど人生は長くない』では、「だから自分はダメなんだ」病についてだけでなく、社会との関わりから生まれる「心の痛み」や「生きづらさ」と向き合うための方法を、心療内科医の立場から得た気づきをもとに記しています。

拙著があなたの人生において「安心」の土壌を育むことに少しでも役に立ち、本来の可能性を発揮する一助となることを強く願っています。

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