「家系を絶やさない」家制度のもとの結婚

同性婚も日本では夫婦別姓と同様に、「家制度」が尾を引いているといえるでしょう。結婚は親が決めるものであり、家系を絶やさないために男女がするもの。そしてここにはLGBTQに対する大きな偏見と差別が存在していました。

戦後になり、憲法によって自由な結婚が保障されるようになりました。日本国憲法第24条は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」とあります。従来の解釈では、「両性」とは男性と女性のことであるから、男女同士以外の結婚は認められないということになっています。

近年、世界的にLGBTQなどのセクシャルマイノリティの人権を守る運動が高まり、日本の憲法学者の間でも、議論されるようになっています。

憲法学者の木村草太氏は、この条文は親の同意などが求められた旧民法に対し、両当事者の意思を尊重する意味で「両性」という言葉を用いたのであって、同性婚を禁止したものではないと述べています。本人同士で結婚を決めていいんだよ、という趣旨でできた条文なんだから、「両性」は男同士でも女同士でもいい。そういう解釈は可能だということです。

一方で、「両性」はあくまでも男と女であるから、同性婚を認めるには、憲法を変えなくてはならない、という学者もいます。

パートナシップ制度は人権保護の第一歩

国として議論が進まないなか、パートナーシップ制度を導入する自治体が増えています。

同性パートナーシップ証明制度は、2015に東京都の渋谷区と世田谷区でスタートし、2021年7月までに、全国で110の自治体が採用しています。基本的には同性のパートナーが自治体に書類を提出し、それに対する証明書が与えられて、異性のカップルと同等の権利が認められるのです。

例えば、カップルのどちらかが入院して「家族以外は面会できません」となった場合、パートナーである公的な証明があれば、面会が許されたりします。それ以外にも、公営住宅の入居が認められたりなど、実質的な不利益を被らないようにするのが目的です。

手をつなぐ男性
写真=iStock.com/DragonImages
※写真はイメージです

しかし、このパートナーシップ制度には、法的拘束力はありません。法律婚ではありませんから、配偶者控除は適用されませんし、遺族年金も適用対象外です。さらには、共同での親権を持つこともできません。

パートナーシップ制度が全国に広がれば、同性婚を認めなくてもいいだろう、という声もありますが、この制度はあくまでも、性的マイノリティの人権を守るための第一歩であることを理解しなくてはなりません。