「モテる者同士で勝手にやってろ」

忘れやすい第一の仮定は、私たちが誰の立場にあるかということです。

私たちは結婚仲介業者の立場ですよね。そこが大事な点です。

第二の仮定は、はっきり言っていなかったかもしれません。ここでは、男性2人と女性2人が「必ず」この中でカップルをつくらなければならないということです。

もちろん現実と比べれば単純なシナリオですが、この手の数学的モデルは、より複雑な現実の状況に影響を及ぼすこともあります。この2つの仮定に留意しながら、再び問題を考えてみましょう。

1つヒントを出すと、結婚仲介業者のいない自然状態であれば、普通{男性1、女性A}{男性2、女性B}となりそうですよね? すると「モテる者同士で勝手にやってろ」と気分を害する人もいるでしょうが、自然状態ではよくあるケースだと言えるでしょう。

事実、結婚仲介業者にとって重要なのは、自然なマッチングなのです。

その理由を考えるために、逆の状況を見てみましょう。

結婚仲介業者が選ぶべきカップルの最適解

もし{1、B}{2、A}というカップルをつくったら、どんな現象が起きるでしょうか。

選好度に背いてマッチングすると、2組とも離婚する可能性が高くなります。いまの相手が嫌になった男性1と女性Aが、お互いを求めて浮気するかもしれません。

では、{1、A}{2、B}という組み合わせにしたら、男性2と女性Bはお互いを嫌いにならないでしょうか? 男性2が女性Aを好きでも、Aが自分のことを好きではないので、浮気のチャンスはありません。女性Bが男性1と付き合いたくても同様です。なので、いまの相手といっしょにいるしかありません。

このように、結婚仲介業者の立場からすると、多くのカップルが成立することが重要です。自分が仲介したカップルが破局に至るのは、ビジネスに悪影響を及ぼすでしょう。

ということは、私たち結婚仲介業者の立場からすると、{男性1、女性A}{男性2、女性B}とするのが正解です。この論理は、私たちの単純な仮定以外に何の情報も必要ありません。

ごく単純なケースを見てきましたが、男女が2人ずつしかいなくても、すでに何か数学的思考が必要になるような気がしますね。

3人ずつではどうでしょうか。講義でこの問題を出すと、学生をはじめ参加者全員が「わっ」と声を上げて頭を抱えます。難しいというのは予想できますよね?

ちょっと想像するだけで、この条件を満たすマッチングの場合の数がかなり増えるからです。3組、4組と増えるだけでも複雑そうなのに、ペアの数が26組にもなったらどうしますか? 非常に複雑に見えますね。