イカの不漁を乗り越え、「いかめし」の味は向上した
農林水産省の漁業・養殖業生産統計によれば、国内の2020年のスルメイカ漁獲量は約4万7000トン。最大に獲れた1968(昭和43)年は約66万8000トンだったので、なんと10分の1以下に落ち込んでいる。
2010年にはまだ約20万トンが獲れていたので、近年の漁獲量の激減が深刻だ。函館をはじめとする道南はかつて、世界有数のスルメイカの大産地だった。
戦後間もない1951(昭和26)年から72年まで、函館市に設置されていた函館海産物取引所では世界唯一のスルメイカの先物取引が行われていたほどだ。
なぜ、海産物取引所が閉鎖されたか。それは現物取引が減った、つまりイカが獲れなくなったのが一番の原因だ。
道南は、そのような歴史からイカの加工業も発達している。当然、地元の人はイカの最もおいしい食べ方をよく知っていて、イカの品質に対する目も厳しいだろう。
道南・森町の企業で「いかめし」を製造するいかめし阿部商店は、外国産のイカを敢然と使用している。国内でイカが獲れなくなったための苦渋の決断だったが、冷めても身がやわらかいという駅弁にとって理想のイカを、こだわりを持って選んでいる。
「いかめし」は不漁を乗り越えて品質が向上し、地元も納得する言わば「いかめし2・0」に進化したのだ。