体にとって「朝食」は不要なもの
結論から先にいうと、起きてすぐに食べる必要はまったくない。
これから始まる一日に備えて「エネルギーを補充しなければ」と私たちは考える。だが、私たちの体は自然とそれを行っている。
毎朝、目覚める少し前に、体の概日リズムによって、成長ホルモン、コルチゾール、アドレナリンとノルアドレナリンといった興奮作用のあるホルモンが一斉に分泌されて体を刺激する。
こうしたホルモンのカクテルが、肝臓に新しいグルコースを産生するよう促し、それにより私たちは目覚めるのに必要な刺激を受け取る。これは「暁現象」と呼ばれ、何十年も前からよく知られる体のエネルギーチャージ現象だ。
朝、お腹がすいていない人は多い。体内で産生されるコルチゾールとアドレナリンが、軽い闘争・逃走反応を促すような刺激を与え、交感神経系が活性化されるからだ。つまり、朝、私たちの体は行動を起こす準備をしていても、食べる準備はしていないということだ。
こうしたホルモンの刺激によってグルコースが血中に放出され、すぐにエネルギーが使える状態になっている。食べなくても、すでに燃料が補給され行動を起こせる状態になっているということだ。
砂糖がかかったシリアルやベーグルなどで、さらに燃料を補給する必要はまったくない。朝、お腹がすくというのは、ほとんどの場合、子どもの頃から何十年とかけて獲得されてきた「習慣」にすぎない。
“breakfast(朝食)”という言葉は、文字どおり”fast(食べない時間)“を”break(断つ)”するという意味だ。”fast”は、何も食べないで寝ている時間を指す。起きてから最初の食事を昼の12時に摂るとすると、グリルドサーモン・サラダが朝食ということになる――それで、何の問題もない。
「朝からしっかり食べる」人ほど太りやすい
朝食をしっかり食べれば、そのあとの一日に食べる量が減るという意見もある。だが、いつもそうとはかぎらないだろう(※4)。
いくつかの研究によれば、朝食でどれだけのカロリーを摂ろうと、昼食と夕食で摂るたんぱく質の量は変わらないことがわかっている。
それどころか朝食をしっかり食べれば食べるほど、一日の摂取カロリーは増える。さらに悪いことに、朝食を食べると、一日のなかで食べる回数も増える。
だから、朝食を食べる人は、食べる量が多くなるうえに、食べる回数も多いということになりがちだ――悪い組み合わせだ(※5)。
また、「朝起きたばかりのときはお腹がすいていないけれども、朝食を食べるのは健康や減量にいいだろうから無理して食べている」という人はとても多い。おかしな話だが、やせようとしているのに、無理してたくさん食べている人が大勢いるのだ。
2014年に16週間にわたって行われた朝食についてのランダム化比較試験では、「一般的にいわれていることとは異なり、朝食を食べることは減量に何の効果もない」ことがわかった(※6)。