築50年の団地に神奈川大学サッカー部の寮をつくったワケ

横浜市緑区。JR横浜線、神大サッカー部のグラウンドがある中山駅の隣、鴨居駅から歩いて20分ほどの丘陵地帯におよそ6600人が暮らす団地がある。竹山団地だ。

バス停
撮影=清水岳志
サッカー部の寮がある竹山団地近くのバス停 

神奈川県住宅供給公社が作った分譲団地で一部に賃貸がある。開発販売されてからすでに50年が経っていて、住人も相応の年齢になっており、65歳以上が43%を占める。団地内に溌剌とした雰囲気は感じられない。

「(都市部も含め)30年後の日本の社会はこうなる。それを見せつけられていると思いました。その時に地域社会を引っ張るにはどうしたらいいか。今から未来の勉強をしよう」

そう考えた時、大森は思いつく。

「住み続けられる街づくり……これって、SDGs(17つの持続可能な開発目標)の11番の項目じゃないか!」

大森の最初のアイデアは、竹山団地に神大サッカー部の寮をつくり、若者の力で盛り上げることはできないだろうかというもの。だが、団地には公社法という法律があって制約がある。まず、大学の学長と公社の理事長が協定を結ぶところからはじまった。2020年3月のことだ。

幸いにも団地の側にも若い世代を入れて突破口を作ろうという機運もあった。家族の制約やルームシェア禁止だった空き部屋が使用可能になって4、5階の空き部屋を部員が寮として使えるようになった。

3Kと2DKタイプで寮費は食費込みで6万5000円だ。部員は一区画に3人の共同生活。コロナ禍で大学の講義をリモートで受けられるようネットインフラも整備した。来年以降も入寮できるように部屋を増やしていって、いずれは全寮制にする予定だ。

部員が食堂運営し、地域の草むしりもする

団地内には幼稚園が2つと小学校もある。商店、病院もある。中心部の商店街の一角にサッカー部の食堂を作った。元は魚屋で空いていた店舗だ。来年は食堂用にもう1店舗、借りることになっている。食堂は部員が使っていない時は地域の人が使えるカフェにできたら、という構想も浮かんでいる。

これまでに団地内の草むしり、倉庫の片付け、池のかいぼり(農作業が終わる冬にため池から水を抜き、一定期間干して、清掃、堤や水路の点検補修を行う作業)などを手伝った。食堂の並びの八百屋の店主は商店街の副会長で、気軽に挨拶が行きかう。学生と住人の距離は着実に縮まっている。

次のターゲットはスポーツジムだ。かつて横浜銀行が入っていたモダンなスペースが残っていて、そのガラス張りの部屋にエアロバイクなどを置きたいと考えている。

「みんなが踏ん切りがつかなくて、そのままにしているから、何かを作ったら」と住人がせっつくそうだ。ジムができれば、高齢者も予防医療として運動が気軽にできるだろう。