Jリーグのクラブで地域貢献の大役を命じられた

サッカーだけじゃないプラスワン。それは自立するためのライフスキルになる、と考えるようになる。

大森
撮影=清水岳志
サッカー部を指導する大森監督(右) 

地域活動の重要性を大森がより強く意識するようになったのは、2011年に当時、Jリーグのクラブ「湘南ベルマーレ」の強化部長・大倉智(現いわきFC代表取締役)に誘われ、いったん神大からベルマーレに移った経験が大きい。Jリーグの理念として、地域貢献の大きな命題が与えられていて、大森がその大役を任されたのだ。

「ちょうど東日本大震災の直後で、(被災地・福島県をホームとするサッカーのクラブチーム)『福島ユナイテッド』の子供たちを受け入れてみたらどうか。その際は、お菓子メーカーさんにお菓子をいただいたり、街の食堂に食事を提供してもらったり。そんなプランをいろいろ考えました」

Jリーグのチームの一員になったことで「地域おこし」を勉強し実体験できたのだ。

イベント成功のため首長、地元商工会、教育委員会、バス会社と折衝

その後、湘南を退社して働きはじめた星槎グループでも地域活性化を推進する。グループ内の総合型スポーツクラブ代表理事として、地元の人々を巻き込みながら大きなイベントを仕切った。それが2018年の「ワンネーションカップ湘南大会」だ。

「ドイツ、ロシア、トルコなど7カ国から128人の子供たちを招待したんです。夢のような大会になった」と大森が顔をほころばすこのイベントは、市政70周年を迎えた茅ケ崎市を巻き込むことに成功したからできたことでもある。

すでに40代となっていた大森だが、現場担当者として協力を仰ぐため資料を持って茅ケ崎市長を訪ね、またスポーツクラブの上司にあたる元サッカー日本代表のレジェンド・奥寺康彦さんに大会の実行委員長に就任してもらった。さらに広域での連携を目指して、近隣の平塚市長と大磯町長にも話をつなげることに成功した。

もちろん商工会会議所の会頭や会長を訪ねて実行副委員長に就任してもらって、経済界の側面協力も取り付けた。教育委員会、ホテル、バス会社などとの折衝も抜かりなくやった。

海外からやってきた子供たちはサッカー大会に参加するだけでなく、鎌倉大仏の見学や、建長寺の座禅などの文化体験もした。それもすべて、大森のプランだった。

「ちょうど平塚七夕太鼓の催しがあって、南アフリカの選手が即興で叩いてくれたんです。こんなうれしいことはなかったですね」

そうやって19年4月、神大の監督に戻ってきた。自衛隊やベルマーレ、星槎グループでのさまざまな経験をしてきた大森は、学生たちがサッカーをやりながら社会貢献できる機会はないかを常に考えた。