文政権に裏切られた「七放世代」の最後の手段

こうした状況下、韓国では10年代に入り、若者の置かれた状況を表す言葉として、恋愛、結婚、出産を放棄した「三放世代」が登場した。それが10年代半ばになると、人間関係、マイホーム、夢、就職までも放棄した「七放世代」となった。

17年5月、「ろうそく革命」の流れに乗って、文在寅大統領が誕生した。若者たちは新大統領に公正の実現と雇用の創出を期待したが、曺国(チョ・グク)法相をめぐる一連の不正事件で公正の実現は裏切られ、雇用の創出も進まなかった。

文政権が所得主導型成長をめざして、最低賃金を18年に16.4%、19年に10.9%と大幅に引き上げたほか、公共部門を中心に非正規職の正規職への転換を進めた。しかし、最低賃金の大幅引き上げによって、小売・飲食業界では従業員を減らす動きが広がり、非正規職やアルバイトとして働いていた若者の働く機会を奪った。また、非正規職の正規職への転換は新規の採用を減らす動きにつながった。若者の生活困窮に追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大であった。

韓国では大学を卒業すればある程度安定した仕事に就き、マイホームをもてる時代は過ぎ去った。ベンチャー企業家としてあるいは芸能・スポーツ界で成功することを除けば、若者がマイホームをもち、親の世代と同レベルの暮らしを実現させる手段としては、株式投資が数少ない反撃手段となる。韓国の若者の株式投資熱の背景には、このような事情がある。

2015年4月17日、混雑する明洞
写真=iStock.com/pius99
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困窮する若者は次期大統領に誰を選ぶのか

最後に、今後注目すべき韓国の若者の動きが二つある。

一つは、株式投資での行動である。株式投資熱が今後も続くかは不明であるが、政府ならびに中央銀行が家計債務の抑制に本腰を入れ始めたため、その影響が出てくることが予想される。

韓国銀行は8月に続き、11月の金融政策決定会合でも利上げしていく見通しである。政府も8月から金融機関に対して融資の総量規制を要請した。このほか、世界的なインフレ圧力の増大や米国のテーパリング開始、景気回復のスローダウンなど、株式市場にとってはマイナス材料が存在する。

こうした状況下、20年に30%以上上昇した韓国の総合株価指数は今年8月以降調整局面に入っている。今後の株価の動向いかんでは、投資を始めたばかりの若者のなかに、損失を被るものが出てくるだろう。

もう一つは、次期大統領選挙での投票行動である。韓国では22年3月に大統領選挙が予定されている。韓国では大統領の任期は5年で、再選が禁止されている。若者の行動がしばしば政治を大きく動かしてきたため、将来を諦観し株式市場に翻弄される最近の若者が選挙に向けてどういう行動をとるのか、また選挙での投票行動が注目される。次期大統領が誰になるかは日韓関係にも影響するため、この点からも今後の動きに注目したい。

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