まずは黒字化して正しく納税すること

稀に有名経営者の講演を聴講すると、「お金を追求してはならない」という言葉を耳にする。

もちろん必要以上にお金を追求してはならないし、誰かの犠牲の上に成り立つ経済的成功は醜い。しかし、ボランティアではなくビジネスをやっているのであれば、「最低限生きていけるだけのお金を稼ぐだけでいい」という話にはならない。

もっと豊かになりたいという願望があるからこそ企業は成長するし、経済は発展するのだ。だからビジネスの本質は「お金儲け」なのである。食事の本質が「必要な栄養をとること」と似ていて、とても味気ないが、事実そうなのである。

本質とは、そのものとして欠くことができない、最も大事な要素のことだ。

だから必要な栄養がとれ、そして美味しい食事ならいいが、ただ美味しいだけの食事は、本質から外れているといえる。

同じように「働きがい」は感じられるが、赤字で、従業員の物心両面を満足させる報酬を支払うことができないような会社は「いい会社」とはいえない。

拙著『最強の経営を実現する「予材管理」のすべて』(日本実業出版社)でも解説した。実に70%近い日本企業が赤字企業である(2016~2017年、帝国データバンク調べ)。この割合は20年以上変化していない。

そのため、世の中の7割ぐらいの会社は、まず「働きがい」以前に、ビジネスの本質である「お金儲け」を考えるべきだ。黒字化して正しく納税することである。

赤字企業が減らないと税収が増えないため、日本政府は何らかの形で増税せざるを得なくなるのだから。

「ビジネスの本質はお金儲けである」という大前提

ビジネスの本質は「社会貢献だ」と言う人がいた。「お金儲けが本質だなんて考えが古すぎる」と主張する。その人は、ある会社の総務に勤めていた。入社5年目の、若手のホープだった。私とディスカッションしたが最後まで話が噛み合わず、結局はお互いの主張を受け入れることがなかった。

金持ち、億万長者
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その彼は30歳を目前にしてその会社を辞めた。父親の会社を継ぐためだったと後で知った。自動車関連の小さな商社を承継したのだが、経営を引き継いですぐに父親が粉飾決算をしていたことを知った。

事業を発展させ、社会に貢献できる会社にしたいとの意欲があった彼だったが、その夢はすぐさま破れた。金融機関との関係を悪化させたために、資金調達に奔走することになってしまったからだ。

私と再会した際、その彼は、「ビジネスはお金儲けが本質です。本当に、本当に、腹に落ちました」と言っていた。心の底から湧き上がる感情を押さえられないように、「まさに、本質です」と言った。

「雇われていた頃は、ビジネスとは何かを正しく理解できていませんでした。立場が変わってようやく気付いたんです」

その通りだと私は思った。本質とは流行に左右されないものだ。食事の本質が「必要な栄養をとる」ことであるのと同様に。しかし、このあたりまえのことを忘れてしまうものだ。