ベテランと若手、どちらの戦闘力が高いのか

先述の会社での、営業部長と総務部長の発言がわかりやすい。

そもそも社長が「業績が低迷している現状を踏まえて、自社で設定した目標ぐらいは達成できる会社にしたい」という方針を打ち出したことが、事の発端だった。役員も幹部も、社長の方針に賛同した。だから私たち外部のコンサルタントが招聘されたのだ。

正しい意思決定プロセスを経て私たちが呼ばれ、さらに現場の営業パーソン自身の行動宣言もあるのに、突然手のひらを返したように、

「ちょっと待ってください」
「これでは若い子たちのモチベーションが下がる」

と言い出した背景には、私たちコンサルタントが想像以上に組織マネジメントに介入してきたことがあるだろう。

自分たちのペースで組織運営ができなくなり、課長をはじめとしたベテラン社員が部長に不平を言い、そして社長に対して、

「現場から不平不満の声が上がっています」

と、あたかも若手の営業パーソンが言っているかのような口ぶりで進言した。なぜ、このような誤解を招く言い分を主張したのか。それは心のどこかで、この件は自分自身で判断してもよいという愚かな価値観があるからではないか。

これは組織の一員としての、しかもリーダーとしての「あるべき姿」ではない。まだ若い社長を支えるのがベテラン部長の役割であり、「あるべき姿」ではないのか。意思決定プロセスにも関与しているわけだし、まったくもって覚悟が足りない。

ベテラン社員と若手社員。どちらの戦闘力が高いか、もうおわかりだろう。使っている言葉で、姿勢がよくわかる。

「モチベーションが必要なケース」と「不要なケース」

このように「あるべき姿」を自分自身で決められると勘違いしている人は、行動が“モチベーション”に左右されるのは当然だ。

しかし本来は組織の一員である以上、しかるべき責任や義務がある。

朝9時に出社することが就業規則で決まっているのであれば、9時までに出社するのはあたりまえであり、それは義務である。社員である以上、9時までに出社する責任がある。自分自身で判断できることではない。

そう考えると、会社が設定した目標、上司から依頼された作業、期首に自分自身でコミットした行動目標――こういったものはすべて、やるべき責任がある。職務として決まっているのであれば、正しく工夫しながら遂行しなければならない。

だからこの会社では、若手のほうがよく理解していた。「それが自分にとってやるべきことだというのなら、モチベーションなんか関係がない」と言っているのだから。

では、会社に勤めている以上、すべてモチベーションなど関係がなくなるのかというと、そうではない。モチベーションが必要なケースはもちろんある。

それは、たとえば個人が自立・自律する上で、自らキャリア開発を考える場合などはそうだろう。自分自身のキャリアプランであるわけだから、自分で立てた計画であったとしてもやる義務はない。やる責任もない。

自分に投資するために英語を勉強しよう。ダイエットしよう。ランニングしよう。テレビを観る時間を制限して読書しよう――。こういった事柄は「モチベーション」に左右されても仕方がない。だから習慣化し、意識せずにできるよう、みんなトレーニングに励むのだ。