消費増税しても財政再建はなされなかった
というわけで、矢野氏がここで財政再建の重要性を指摘したのは、何も、個人的な大和魂の帰結というわけではなさそうだ。実際、寄稿文の内容も、財務省の従来の主張と変わらない。「財務省はこれまで声を張り上げて理解を得る努力を十分にして来たとは言えません」と書いているが、財務省は従来、「このままでは国家財政は破綻する」と危機感を煽って消費税率の引き上げなど増税路線を突き進むというやり方をとってきた。
消費増税して何が起きたか。財政再建などされずに歳出規模を膨らませただけではなかったか。無駄に予算が使われている事業や、経済効果が乏しい助成金などいくらでも景気に影響を与えず歳出を減らす術はある。その役割は本来、財務省が担っているのだが、予算を柔軟かつ大胆に見直していく仕組みすらほとんど機能していない。
消費税率を上げれば財政再建できると言うが、どんどん貧しくなっている日本国民からどれだけ税金を取れると考えているのか。財務省自身が発表している「国民負担率」、国民所得に占める租税負担と社会保障負担の合計の割合は2020年度で46.1%に達している。国民の「担税力」も無限大ではない。
かつて、土光敏夫氏が「第二次臨時行政調査会」で行政改革に大鉈を振るった際、合言葉は「増税なき財政再建」だった。矢野氏には、是非、令和の「増税なき財政再建」について寄稿発表していただきたい。