モスコフスキー・コムソモーレツ」紙は、「岸田政権は、ロシアに融和的だった安倍政権の政策とは違う。政治対話を続けても、新しいイニシアチブが東京から打ち出されることはない。日露関係は冷え込み、しばらく停滞する」とのオレグ・カザコフ極東研究所研究員のコメントを伝えた。

ロシアは現在、プーチン大統領が高揚させた愛国主義と第2次世界大戦の戦勝神話がピークに達しており、「4島」に言及するだけで交渉に応じないだろう。この点では、安倍外交に影響力を持った鈴木宗男参院議員(日本維新の会)も「56年宣言を基礎とする交渉のラインを変えたら、ロシアは乗ってこない」と指摘している。

日ロ関係の進展は期待できない

岸田首相が親米派で、「日米同盟が基軸」「自由で開かれたインド太平洋」「クアッド(日米豪印)の枠組み重視」を外交公約に掲げていることも、日露交渉には障害となろう。

ロシアはクアッドを「アジアのNATO(北大西洋条約機構)」を作る試みと非難し、とりわけ友好国のインドが米側陣営に入ることを憂慮している。

極東研究所のワレリー・キスタノフ日本研究センター所長は「独立新聞」で、岸田氏は敵基地攻撃能力の保有に前向きで、外交面でタカ派になると予測。領土問題でも強硬姿勢で、日露関係の進展は期待できないと述べた。

前出のカザコフ氏も、「岸田氏は日米同盟やクアッドの枠組みで外交路線を推進する。安全保障問題に関心を強めるため、日米安保体制の強化や中国の脅威が主要テーマになる」と分析した。日米同盟重視の岸田外交は、中露枢軸重視のプーチン外交とは合致しないとの見立てだ。

「組員」同士の対立は避けなければならない

ただし、「人の意見を聞く」ことを身上とする岸田氏は、慎重でバランス感覚があり、ロシアとの関係悪化を回避するだろう。

岸田首相は、安倍政権が設置した露経済分野協力担当相(経産相が兼務)を存続させた。総裁選では、高市早苗候補が主張した「米国の中距離ミサイルの日本配備」「防衛予算のGDP比2%への増額」に同調しなかった。米軍ミサイルの日本配備も、ロシア側が厳しく牽制するテーマだ。

こうみていると、日露関係や領土交渉は岸田政権でも停滞が続きそうだ。「組長」である米中の抗争が激化すれば、「組員」の日露も連動して対立するだけに、日露は関係悪化を防ぐ安保対話を続けるべきだろう。広島県選出の岸田首相は国際政治の「仁義なき戦い」を避けねばならない。

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