他律的マネジメントを軸にする日本企業が抱える弊害
これまで日本企業の多くは、他律的マネジメントを軸にしてきました。
他律的マネジメントとは、個々の社員の職務を詳細までは定めず、管理職はその日の状況や経営陣からの指示を踏まえ、時に担当範囲を超えた職務に社員を従事させるなど、献身的で従順な対応を求めるスタイルです。
在宅勤務者に禁煙を求め、社員個人が責任を負うべき範囲まで踏み込んで会社が制御しようとするスタンスもまた、他律的マネジメントの一環です。
それは、組織が歩調を合わせて高い統率力を発揮させる上では、有効で優れたスタイルなのかもしれません。
しかしながら、社員を組織の思い通りに動かそうとする他律的マネジメントは、いくつもの弊害をもたらす可能性もあります。中でもポイントだと思う弊害について、在宅勤務中の喫煙と関連づけながら以下に3つ挙げたいと思います。
①自律的に動ける社員が育たず他社との差が開くばかり
会社から在宅勤務でも禁煙しなさいと指示されれば、他律的マネジメントに慣れていて真面目で従順な社員は、たとえヘビースモーカーであってもタバコを我慢すると思います。
しかし、一方では隠れて喫煙している社員もいるということになってしまうと、正直者がばかを見ることになります。
会社としては、そうならないように監視の目を強化する必要が出てきます。例えば、勤務中はZoomなどのテレビ会議システムを常時接続しておいて、喫煙状況を確認するといった具合です。
常に社員の状況が見えるようにし、社員も常に会社から見られていることを意識して振る舞えば、他律的な統制は保たれるかもしれません。
しかしそれは、社員にとって窮屈であり、その反面自己管理が不要で組織への依存度が高まり、自律性が育ちにくい環境だと言えます。
そんな他律的マネジメントの下では、社員は自ら考えて能動的に動く必要性がほとんどありません。管理職から言われた通りに動けばよいという意味ではラクであり、指示待ち傾向が強くなります。
変化が激しく先が読みづらい時代に、現場の最前線にいる社員が自律的に判断して動ける組織と、他律的で統制はとれているものの指示がないと社員が動けない組織とでは、競争力や生産性において、いずれ大きな差が生まれていくように思います。