ただ、完全EV化については、内燃機関が出すCO2 、NOxをなくす一方で、発電所のCO2が増えるのではないかという声もある。ヨーロッパで、発電所が出すCO2が問題視されることはほとんどない。国境を越えて輸出されているフランスの巨大な原子力発電が安心材料になっているようだ。

EUには電気を売買するメッシュ状のネットワークがあり、EU非加盟国のスイスを含めて互いに4500億キロワットもの電気を融通しあっている。なかでも約7割が原子力発電のフランスは輸出国で、ドイツが自国の原子炉を閉鎖できるのも、フランスの原子炉で発電した電気を買っているからだ。

クリーンエネルギーの開発も進んでいる。例えば、都市のゴミを燃やして火力発電所の蒸気タービンをまわすバイオマス発電、運搬しやすいアンモニアを燃やす火力発電、水を電気分解してつくるグリーン水素などだ。各国は、化石燃料を各国の得意なクリーンエネルギーに置き換え、カーボンニュートラルの達成をめざしている。

一方で、EUは世界初の「国境炭素税」導入を準備している。彼らから見てカーボンニュートラルに熱心でない国の輸入品には炭素税をかける。例えば、中国から安い製品が輸入されたら炭素税を乗せて値段を高くする。逆に、国内製品を中国へ輸出するときは炭素税を引いて値段を安くする。国境炭素税によって、EUの競争力を維持する構想だ。環境政策が共通国家戦略になることがわかるだろう。

自動運転レベル5を実現できる企業とは

自動車業界ではモビリティ革命「MaaS(Mobility as a Service)」が進んでいる。EV化はたしかに軸となる技術の1つだ。しかしMaaS革命の勝者になれるかどうかを決めるのは、もう1つの軸である自動運転の技術だ。

自動運転の技術には、自動ブレーキなど運転手を支援する程度のレベル1から、完全自動運転のレベル5までの5段階が設定されている。現在、世界の主な自動車メーカーは、レベル3(条件付自動運転)からレベル4(高速道路などの特定条件下での完全自動運転)へ向かう段階にある。レベル4からレベル5へ進む準備ができているのは3社だけで、アメリカ勢のテスラ、グーグルのウェイモ、GMだろう。

レベル5では100%、データの勝負になる。完全自動運転の鍵は、通常の走行では起こらない突発的な事態への対応だから、それぞれユニークな対応プログラムが必要になる。突発的な事態を数多く経験し、データを蓄積したほうが勝つのは当然だ。テスラ、ウェイモ、GMの3社は、膨大なデータを握っているという点でレベル5に最も近いのだ。