「あいつは使えないから」。そんな言葉で他人を評価する人がいる。心理カウンセラーの五百田達成氏は「なぜモヤモヤするのかといえば、それは『人を道具扱いしている』から。ひとりの人間をつかまえて、『機能的かどうか』『自分にとって使い道があるかどうか』だけで判断し、それを声高に主張する。それは寒い考え方だ」という――。

※本稿は、五百田達成『繊細な人 鈍感な人』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

オフィスで暇そうにしている女性
写真=iStock.com/AntonioGuillem
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「神目線」の分析に歯止めが効かない人たち

1.あいつは無能だから
4コマ「あいつは無能だから」
マンガ・イラスト=りゃんよ

「あいつってけっこう優秀だよね」
「確かに。それにひきかえあいつはダメだな、ホント無能」

職場の片隅や飲み会でこんな会話が聞こえてきたら、どう感じますか? 私なら、なんだかゾワゾワします。たとえほめているのだとしても、どこか血の通っていない冷たい響きに怖くなるからです。

自分の話じゃなくても、知ってる人の名前が出てくると「一方的に決めつけられてかわいそう」と悲しくなったり、「私も知らないところで言われてるのかな」と不安になったりしませんか?

優秀・無能、できる・できない。これらは人を「評価する」言葉です。評価とは、自分のことを棚に上げて他人のことを好き勝手に言うこと。「神目線」で一方的に分析すること。ですからある種の人は「評価」が大好きです。仲間内で好き勝手に言い合っては悦に入る。気持ちよくなってしまって歯止めが効かない状態ですね。

もちろん上司や人事部が社員を評価するのは悪いことではありません。それは彼らのお仕事ですから。でもそういう人たちは人に聞こえるようにウワサ話をしたりは絶対にしません。人目もはばからず同僚をジャッジする人たちは、モラルも常識も欠けているというわけ。

ウワサ話はドラッグのようなもの

同じウワサ話でも、これが個人的な感想ならまだいいのです。

「彼はいつもいいタイミングでサポートしてくれるから、助かる」
「あいつ、ま〜た報告しないで抱え込んでるんだよ。困るんだよな」

そこには血が通っているし「あくまで主観」とお互いがわかっているから。いわゆる「Iメッセージ」ですね。

そうではなく、この人たちはまるで「周知の事実」かのように言い切るのも特徴。なぜなら、そのほうが「オレはそうは思わないけどな」と反論されにくいから。安全だから。ネットでもよく見かける、ずるいコミュニケーションです。

毎日こんな話を聞いていたら、あなたの心には確実にダメージがたまっていきます。心が冷たくなったら、すかさずその場を離れましょう。ちょっと休憩でもして、ダメージを回避してから席に戻ります。

間違ってもそんなうわさ話に乗ってはいけませんよ。ドラッグと同じで、そこは闇の世界への入り口ですからね。