「友達と仲良くしましょう」という当たり前のひと言が、子どもを苦しめることがある。発達障害の専門医、本田秀夫さんは「発達障害のある子に『友達と仲良く』と言わないほうがいい。それでは自分のやりたいことをできなくなってしまう可能性がある。友達と仲良くするのは悪いことではないが、目標にしてはいけない」という――。

※本稿は、本田秀夫『子どもの発達障害』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

子供たちのグループ
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発達障害の子に「友達と仲良く」と言ってはいけない

発達障害という言葉は、世間での認知度が上がり、理解が深まりつつあります。それは脳機能の発達に関係する障害で、いくつかの種類があります。例えば、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害)、チック症、吃音などです。

文科省の2012年の調査では、小中学生の6.5%が発達障害の可能性があるといいます。2018年発表の厚労省の推計では、発達障害と診断されている人は約48万1000人に上ります。

「自閉スペクトラム症」の子の場合、「臨機応変な対人関係が苦手」「こだわりが強い」といった特性が見られます。相談についても、対人関係に関するものが非常に多いです。ここでは個別の対応というよりは、対人関係の基本を解説します。

まず、発達障害の子に「友達と仲良く」と言ってはいけません。発達障害の子に友達と仲良くすることを求めるのは、「なによりもまず多数派に合わせることが大事」だと伝えるようなものです。それでは発達障害の子は、自分のやりたいことをできなくなってしまう可能性があります。友達と仲良くやっていくのは悪いことではないのですが、目標にしてはいけません。

発達障害の子にとって、仲良くなるのは目的ではなく結果です。好きなことを楽しんでいるうちに、ふと気がついたらそこに同じ活動を楽しんでいる子を見つけた。そしてなんとなく一緒に活動するうちに、結果として仲良くなった。発達障害の子はそうやって友達をつくることがあります。無理に仲良くなったのではなく、気が合って友達になっているので、一般的な「友達」よりもむしろ仲が良かったりします。