東大卒でメガバンクに就職する人は多い。彼ら彼女らの社会人生活が安泰かというと決してそんなことはない。仕事のストレスからうつ病を患ったという東京大学法学部卒のメガバンク行員・加瀬良介さん(仮名・37歳)は「社内で成績を評価されるがキツかった。口のうまさと体力にまかせてガンガン数字をとってくるMARCH出身にはかなわない」という——。

※本稿は、池田渓『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

銀行本社ビル
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「仕事がつらすぎる。ストレスがすごい」

「死にたい」
——「またそれか」
「ごめんね。でも、死にたい」
——「死んだらいかんよ。僕、加瀬くんが死んだら、しばらく体調を崩して寝込んじゃうよ」
「……うん」
——「会社に行きたくないの?」
「うん」
——「なんで?」
「仕事がつらすぎる。ストレスがすごい。勤務中は常にプレッシャーを感じていて息がつまる。意地悪な先輩もいる」
——「でも、加瀬くんのとこメガバンクじゃん。仕事は激務でもそのぶん給料はいいでしょ」
「しょせん都銀だし世間に思われているほど給料はよくないよ」
「なんのために働いているのかわからん。なんで銀行なんて入ってしまったんかな。頭がグチャグチャしてなにも考えられん」

このやりとりは、僕が東大に入学したときからの友人である加瀬良介くん(仮名・37歳)と、ある年の夏にLINEで交わしたものだ。

加瀬くんは大阪府出身。中高一貫の私立校から東大文一に入った。

東大法学部を卒業した後、邦銀のメガバンクに就職してバリバリ働いていた——はずなのだが、いつのころからか、彼はなにかにつけて「仕事がつらい。もう死にたい」と口にするようになった。

うつ病を患った「銀行」は東大卒のメジャーな就職先

先のやりとりから3カ月ほどがたったある冬の日、加瀬くんはついに無断欠勤をすることになる。その日、目が覚めると指一本動かせなくなっており、会社に電話をすることもできなかったという。

夕方になって心配した上司が家に様子を見に来るまで、彼はじっと布団に横たわり、ただ天井のシミを見ていたそうだ。

その後、加瀬くんは銀行お抱えの産業医に「この人間はうつ病のため約半年間の自宅安静での加療が必要である」との診断を下され、人事部から半年間の休職を命じられてしまった。