「寝泊まりできる場所がない」から水商売や性産業で働く
「ネットカフェを転々としたり、公園で寝泊まりしたり、男性の場合はそれで耐えられます。一方で、女性の場合は、外で寝泊まりすることはできないので何らかの形で出会った異性のもとに身を寄せるか、従業員寮が付いている水商売や性産業で働くことになるケースが多々あるんですね」
以前、高橋さんが支援にあたった20代の女性も児童養護施設の出身だった。
施設を退所した後、女性は正社員としてビジネスホテルに就職した。社宅も完備されていた。女性は平均週休1日のペースで働いたが、月収は手取りでおよそ12万円だった。
女性は激務がたたり、過労により腰を痛めてしまう。そして緊急手術と入院療養が必要になったことを会社側に伝えると、一方的に解雇を通告されたのである。それは社宅からも追い出されることを意味していた。
ある日突然、路頭に迷うことになってしまった女性は、まず出身の児童養護施設に電話で相談した。
しかし、受話器の向こう側にいた施設のスタッフは、助けを求める女性に対し、予想もできなかった言葉を口にしたという。
「悪いんだけど、ここでは対応できないな。役所に行ってみて、そこで相談しなさい」
施設からも、役所からも見放された女性の行く先
女性がいくら事情を伝えても、理不尽な目に遭っている状況についてありとあらゆる説明を尽くしても、取り付く島はなかったという。「それはできない。そんな余裕もないし、すでにあなたの措置期間は終わっている」と拒絶されたのである。
そして、女性は一縷の望みをもって役所の窓口を訪れた。行政であればなんとかしてくれる、という思いがあったからだ。
ところが、ここで女性はまさかの二度目の絶望を味わうことになる。
「まだ親御さんが生きてますよね。親が生きている場合には、まずは親を頼ってください」
役所の担当者は、カウンターの目の前に座っている女性が児童養護施設の出身者と認識していたにもかかわらず、行政としての支援の端緒も与えなかった。
無論、女性は親とのつながりを断っていた。行政の社会福祉というセーフティネットからも見放された女性。たどりついたのは性風俗店での勤務だった。まとまった金が手に入り、雨風をしのげる住まいも用意してくれる場所は他にはなかった。