10代で突然親がいなくなったら、子どもはどうやって生きていけばいいのか。17歳で親と仕事を失ったある少年は、振り込め詐欺のグループに入った。きっかけは「地元の先輩の紹介」だという。NHK報道番組ディレクターの大藪謙介さんと社会部記者の間野まりえさんが取材した――。

※本稿は、大藪謙介・間野まりえ『児童養護施設 施設長 殺害事件』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

ATMでお札を数える手
写真=iStock.com/Motortion
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「受け子」や「出し子」になる少年たち

家庭環境は常に一定ではなく、両親の離婚、引っ越し、病気、事故など、さまざまな理由で突然変化が訪れることもある。10代で、突然親が目の前からいなくなったとき、その先をどうやって生きていくのか。その重みについて考えさせられる取材もあった。

2018年、振り込め詐欺の「アポ電」(家に現金があるかどうかを確認するために身内を装ってかける電話)から強盗につながるケースが都内を中心に相次いで発生。これまでも、振り込め詐欺グループは少年などをうまく取り込み、「受け子」や「出し子」と呼ばれる現金の受け取り役、いわば最も逮捕されるリスクの高い末端のメンバーとして使っていることがわかっていたが、さらに、SNS上でも「闇バイト」などと称して詐欺や強盗の実行犯を募るようになっていた。私たちは取材班をつくって、これまで詐欺グループとは無縁だった人までとりこまれ始めている実態を調べていた。

実行犯を集める「リクルーター」や、詐欺グループの関係者を取材していたときに出会ったのが、かつて詐欺グループにいたという拓海さん(20代・仮名)だった。拓海さんは10代のころに詐欺や強盗などの容疑で逮捕され、2年間、少年院にいたという。現在は犯罪に関わっておらず、経験談なら話してもいいと待ち合わせ場所に現れた拓海さんは、同級生は大学生という年代にもかかわらず、その口調はあまりに落ち着いていて、達観しているようにも見えた。

「まっとうに働くという選択肢はなかった」

「最初のころは罪悪感もありましたよ。お年寄りが必死に貯めたお金を根こそぎ持って行くわけですから。お年寄りの中には弁当を作ってくれる人までいるんですよね。そういうときはさすがに悪いなという気持ちになりました。でも僕らとしても生きるため、生活のためにやらざるをえなかった。やらなきゃ食べられなかったんです。どこも雇ってくれるところなんてなかったし、まっとうに働くという選択肢は僕にはなかった」

なぜ振り込め詐欺に加担したのかたずねると、生い立ちを語った。

拓海さんの母親はシングルマザーだったが、拓海さんが幼いころに違法薬物の売買で逮捕され、刑務所に服役することになった。ほかに頼れる親族のいなかった4歳の拓海さんは、児童養護施設に入所することになった。そして拓海さんが中学を卒業するころに、母親が出所。拓海さんは母親の記憶はほとんどなかったものの、施設よりも母親と暮らすことを選択した。母親の恋人も一緒だった。16歳のときに誰も知っている人がいない土地に移り住み、母親の恋人が社長を務める会社に就職した。