なぜこれほどまでに新生銀がほしいのか
なぜ北尾氏はこれほどまでに新生銀がほしいのか。北尾氏は8地銀に出資する前から新生銀行を「第4のメガバンク」のプラットフォームとして手に入れる構想を持っていたと関係者は語る。そこには長く金融界に身を置き、銀行の再編をつぶさに見分してきた北尾氏の知見がある。
時計の針を長銀が一時国有化される直前の1990年代央に戻さなければならない。
バブル経済に踊った長銀は、系列ノンバンクや不動産業への貸し付けが不良債権化し、経営危機に瀕していた。日本興業銀行と並ぶ長信銀の雄として日本経済のメインフレーム企業に長期の資金を供給する長銀の経営危機は、日本の金融システムそのものを揺るがせかねなかった。
北尾氏は“幻のプラン”を実現させる狙いか
その打開策として構想されたのが、当時の日本輸出入銀行や日本開発銀行などの政府系金融機関との統合だった。だが、これは政府系金融機関の反対で頓挫した。次善の策として考案されたのが、金融債を通じ広範なネットワークを持つ地銀との連携であり、「地銀連合のセントラルバンクとして長銀を位置付けるものだった」(長銀OB)であった。
地銀にない高度な金融スキルとノウハウを持つ人材を有する長銀は、まさに地銀のセントラルバンクとしてうってつけの存在だった。旧大蔵省銀行局もこの案を推していた。
しかし、そこに米国の横やりが入り、国内の政治的な混乱もあり、長銀は一時国有化され、米投資ファンドへ売却された。こうした経緯を知る北尾氏は、まさに時計の針を1990年代央に戻そうとしているように見える。その帰結はまもなく出る。
金融庁が北尾氏の新生銀行買収にNOを突きつけず、長銀の一時国有化に関与した元金融庁長官が会長に就くことはその象徴と見ていい。SBIによる新生銀行へのTOBの背景には、北尾氏の深い歴史観がある。