新生銀の防衛策はホワイトナイトの獲得だが…

SBIは株主総会の早期開催のほか、①重要性の低い質問はせず、いたずらに検討期間を延長させないこと、②新生銀の株主総会で買収防衛策の発動を審議する場合、TOBが株主の利益を損ねる恐れがあるとする具体的な根拠を示すこと、③総会でのSBIの議決権行使を認めなかったり、新生銀が他社への新たな株式取得を働き掛けたりしないこと――を条件として挙げている。

一方、新生銀行はTOB期限をできる限り延長させる間に、ホワイトナイトを見つけることが最大の眼目で、ソニーグループやセブン&アイ・ホールディングス、企業再生ファンドなどと水面下の交渉を行っている。しかし、本命視されるソニーグループやセブン&アイ・ホールディングスは回答を控えている。

「SBIが提示したTOB価格が高く、仮に敵対的TOB合戦となった場合、価格がつり上がる可能性があり、コスト高が避けられないほか、ホワイトナイトが成功しても、買収後の新生銀行の企業価値を早期に引き上げるのは容易なことではない。明確で実現性の高い成長戦略が描けなければホワイトナイトに手を上げるところがすんなりと見つかるとは思えない」(メガバンク幹部)とみられるためだ。

大きい成功を主張
写真=iStock.com/gradyreese
※写真はイメージです

破格の安値で買収された悪夢がよみがえる

また、企業再生ファンドにホワイトナイトを要請した場合、かつて新生銀行の前身である日本長期信用銀行(長銀)が一時国有化後、米国の投資ファンド「リップルウッド」に買収された悪夢がよみがえる。「破格の安値で長銀を買収したリップルウッドは長銀の再上場と高配当で法外な利益を手に入れた」(メガバンク幹部)だけに、市場の評価は得られそうにない。そもそも企業再生ファンドは最終買収者への橋渡し役でしかない。いずれ出口戦略が待ち受けている。

また、SBIはTOB期間延長の条件として、「新生銀が他社への新たな株式取得を働き掛けたりしないこと」を挙げている。ホワイトナイトを捜すこと自体を牽制しているわけだ。これでは新生銀行が条件を受け入れることは難しいだろう。北尾氏は新生銀が買収防衛策を導入することに激怒したと周囲は語っている。