金融庁OBを次々と重要ポストに据えている

今年6月に開催された新生銀の株主総会で、SBIは工藤氏、アーネストM.比嘉氏、槇原純氏、村山利栄氏の4役員の再任決議に反対票を投じた。工藤氏ら役員は再任されたが、SBIは今回のTOBに際してもこの意向を変えておらず、TOB成立後、臨時株主総会の招集請求を行い、役員陣の全部または一部の交代を求める方針だ。「取締役メンバーの中には、ゴールドマン・サックス証券やマネックスグループなど、社外取締役の出身母体に特定の偏りがあるように見受けられる面もある」(SBI)とも指摘している。

そのSBIが新取締役会長候補に推薦しているのが元金融庁長官の五味廣文氏(プライスウォーターハウスクーパース総合研究所理事長)だ。メガバンク幹部によると、「SBIは第4のメガバンク構想と並行して金融庁の有力OBを次々とスカウトし、グループ企業の重要ポストに据えている。

16年に元審議官の乙部辰良氏(現SBIインシュアランスグループ会長兼社長)を招聘しょうへいしたのを皮切りに、17年に元長官の五味廣文氏を社外取締役に招き、18年に元総括審議官の小野尚氏(現SBI生命保険社長)をスカウトした」という。SBIの北尾氏はその五味氏を新生銀の会長に就けるというのだ。

五味氏はいったいどんな人物なのか

五味氏は1998年6月に財金分離されたばかりの金融監督庁(金融庁の前身)の検査部長となり、同年12月に日本長期信用銀行(新生銀行の前身)を一時国有化した当事者の一人だ。

その後、五味氏は金融庁検査局長、監督局長を経て2004年に第4代金融庁長官に昇りつめ、小泉、第一次安倍内閣下で足利銀行やりそな銀行の国有化を行い、消費者金融のグレーゾーン金利を是正するなど剛腕を発揮した。一方、戦後初のペイオフ案件となった日本振興銀行や石原慎太郎氏(当時・東京都知事)が提唱した「新銀行東京」の設立にもかかわった。

敵対的ともいえるSBIのTOBに対して、新生銀はSBIに対抗できるホワイトナイト(白馬の騎士)を招聘できるかが焦点になる。

新生銀行は9月16日に、TOBの経緯をめぐりSBIと見解の相違があると発表。SBIによる資本提携の提案や、新生銀行とマネックス証券の包括提携の経緯について、SBIの認識が不正確だと指摘した。SBIに対して詳細な質問状を送付するとともにTOB期限の延長と買収防衛策を講じることを示唆した。

これに対してSBIは当初、TOBの延長要請は「単なる時間稼ぎで、株主の利益を著しく損なう」と反発したが、その後、株主総会の早期開催に加え3条件を前提に、一定期間のTOB延長を認める構えに転じた。