新生銀の「事実上の買収」に乗り出した
北尾吉孝社長が率いるSBIホールディングス(HD)が新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)に乗り出した。SBIは新生銀行株の20.32%を保有する主要株主だが、9月10日から当初の期限を延長して12月8日までTOB(株式公開買い付け)を実施し、約1100億円を投じて出資比率を48%まで引き上げたい意向だ。買い付け価格は新生銀株の9月9日終値の1440円を39%上回る1株2000円に設定されている。
SBIはTOBによって新生銀株を連結子会社化する意向だ。仮にTOBへの株主の応募が上限の48%に達しない場合でも、残る株式を市場から買い上げるか、追加のTOBが想定されている。さらにSBIは株式を買い増し完全子会社化した後、非上場化する可能性もある。事実上の買収だ。
ただし、50%超の株式を取得する場合、SBIHDが新生銀行の持株会社になるためには銀行法第52条など法令上の許可が必要で、金融庁の認可が前提となる。最後には大株主で新生銀行株の20%程度を有する国(預金保険機構)との交渉が残ることになる。
北尾氏を激怒させた新生銀の対応
SBIは昨年夏に地方創生を効率的に具現化するための統括会社「地方創生パートナーズ」(東京・港区)を設立し、「第4のメガバンク」を標榜した地銀連合構想を進めている。第二地銀を中心にこれまでに8行に資本出資しており、「当面、10行程度まで広げる」(北尾氏)との意向を表明している。その地銀連合の中核会社的な役割を新生銀行に求めており、北尾氏は以前から「新生銀行を(地方)銀行の銀行にしたい」と周囲に語っていた。TOBはその戦略の延長線にある。
SBIは2019年4月から新生銀株を買い増し、同年夏にはSBIの北尾氏から新生銀の工藤英之社長に資本提携の提案を行っている。しかし、「新生銀内にSBIの連結子会社になることへの反発が強く、資本提携は実現しなかった」(金融庁関係者)。その後、両社は連携に関する協議を継続したが、SBIが求める資本や証券業務分野での提携に新生銀側は首を縦に振らなかった。そればかりか同行は今年3月にSBIとライバル関係にあるマネックス証券と包括提携を行い、SBIを激怒させた。北尾氏は工藤氏を「信義にもとる男だな」と不満をぶちまけたとされる。