総裁選に勝ったとしても、菅氏と同じ命運をたどる恐れ
その一方で、観光業界をはじめ、経済界にこの総裁選期間中に足しげく通う岸田氏には期待を寄せている。岸田氏は公約として「Go To トラベル」を進化させた「Go To 2.0」を掲げたが、こうした発言も観光・運輸業界に支持を広げる理由となっている。
安倍・菅氏と長く続いた「官邸主導」の政治のなかで、政治を支える官僚機構は人事を抑えられ、「官邸に都合の悪いデータや情報をあげると、クビを切られる危険もある」と、霞が関の官僚は息をひそめてきた。政策の妥当性を議論する場はなくなり、根拠のない政治家の「空手形」に似たむなしい言葉だけが躍った。その象徴が退陣に追い込まれた菅首相だ。
耳当たりのいい言葉しか言わない仲間内の側近を重用する一方で、国のためにと、身を賭して政策を進言する官僚や国民の言葉には耳を傾けない。人事で縛っていた「脅し」だけで成り立っていたもろい組織は、そのトップがその権力を失うとみるや、求心力を失い、一気に人心が離れていった。
「恫喝」で官僚たちを締め上げ、市井の声に耳を傾けない河野氏は菅氏の轍を踏むことはないのか。地盤のもろい自民党の若い議員や無党派層を取り込んでトップに立っても、政策を立案し実行する官僚や行政が背を向けば、また河野氏も菅氏と同じ命運をたどることになる。