「防衛大臣から離れてもらってほっとしている」との声も

このやり取りは9月2日の官房長官の記者会見でも取り上げられた。加藤勝信官房長官は記者からの質問に対し、「政府内の非公開のオンライン会議の議論が外部に漏洩した。関係省庁で事実確認し、必要に応じて適切に対応する」として、幕引きを図ったが、官僚たちの河野氏に対する「怨念」は収まらない。

「人の話を聞かない」「独断専行」「根回しをしない」。防衛大臣だった河野氏のことをこう並べ立てて指摘するのは同省の幹部だ。

防衛相だった河野氏は、迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について安全性に問題があるとして、いきなり配備を断念した。自民党内ではその「独断」ぶりに批判が噴出した。

また、防衛省の施設で使う電力も将来的には「再生可能エネルギー比率100%を目指す」と会見でいきなり発言、防衛省の事務方は度肝を抜かれた。

天候などで電力供給がストップしかねない再生エネに自衛隊が依存するようになれば、それこそ、有事の時に危機的な状況に陥りかねない。「防衛大臣から離れてもらってほっとしている」(防衛省幹部)との声も漏れる。

富士山と日本のソーラーパネル
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あまり公にされていなかった河野氏の「影」の部分

河野氏のこういう態度に辟易しているのは官僚だけではない。河野氏はSNSを駆使し、ツイッターでは234万人以上のフォロワーを抱えるが、意見の合わない相手は容赦なくブロックしてしまう。会見でこの点を問われると「ブロックするのは問題ない」「通りすがりの人を罵倒するようなことが起きている」と反論、意に介する様子もない。

総裁選で争うとは言え、身内である岸田文雄氏も「怒鳴ってばかりではチーム力を発揮できない」、高市早苗氏も「(河野氏は)反原発、原発ゼロでしたっけ。たまたま河野先生の地元を車で通りすぎたとき、そのポスターがいっぱい貼ってあり、その印象がある」「声が大きくて、とても元気な方だ」と、総裁選前まであまり公にされていなかった河野氏の「影」の部分をやんわり指摘する。

新聞各紙の世論調査で次期総裁にふさわしい人物として河野氏がトップに上がる。また、衆院選を直前に控える中で、選挙基盤が脆弱な若手議員からの支持も高い。しかし、新型コロナウイルスの問題や、緊迫度を増す北朝鮮情勢、さらには、河野氏の関心の高いエネルギー政策など、課題は山積している。そこで政治を支える官僚からの支持を取り付けられなければ、政策の実効性は乏しくなる恐れがある。