再エネだけでは製造業が日本に居続けるのは難しい

特にエネルギー政策を巡っては、経済界から「仮に河野氏が総裁選に勝ち、首相になったら、原発ゼロの話を前面に押し出してくる」「(河野氏支持を表明した)同じ意見を持つ小泉進次郎氏を閣僚に招いて原発ゼロを押し進める」といった声が多く聞かれる。その筆頭が、日本自動車工業会の豊田章男会長の「今のカーボンニュートラルの議論はコストの問題が欠落している」との批判だ。

再生エネを河野氏の主張する「36~38%以上」とした場合に、送配電網の整備や電気を貯める蓄電池などの設備に兆円単位の費用がかかる。日本自動車工業会の幹部は「その費用はだれが負担するのか。結局、電力を利用する一般国民や企業が負担することになる。そうなれば、製造業は日本では物を作れない、海外に出ていかざるを得ない。こうした議論をせずにおいて、『環境にやさしいグリーンな社会の実現』といったところで、産業界はだれも支持しない」と話す。

また、経団連の幹部も「原発維持=大手電力の既得権益維持、とすぐ曲解されるが、そんな単純な話ではない。資源のない日本は不安的な再エネだけでは安定的な電力供給はできない。現実的な観点から議論を深める必要がある」と河野氏に注文を付ける。

決選投票になれば、国会議員票で有利な岸田氏が有力か

コロナで打撃を受ける観光や運輸業界からも河野氏を警戒する声が聞かれる。野田聖子氏が難しいとされた20人の推薦人を確保し、総裁選に立候補した。その陰には二階幹事長の助力があったとみられている。

二階氏は菅氏と並んで、観光や運輸業界に強い影響力を持つ。河野氏は一回目の投票で支持率の高い「党員票」の獲得で岸田氏や高市氏に一気に差をつけ逃げ切るシナリオを描いていたが、野田氏が4人目の候補として参戦することで、その党員票が割れ、決選投票にもつれ込む公算が高まっている。

野田氏への二階派の推薦人は8人と飛びぬけている。二階派は河野氏への推薦人も出しているが、その数は2人。総裁選間際になって河野氏の勢いをそぎ、決選投票になれば、国会議員票で有利な岸田氏に軍配があがる可能性が高い。

二階氏とつながりが強い観光・運輸業界は「独断専行」で物事を進める河野氏への警戒感は強い。特にリニア東海道新幹線では大井川水系への影響から静岡県が県内でも工事中止を求めて、現在、建設がストップしているが、「環境派」を自認する河野氏が首相になった場合、「リニアが吹っ飛ぶ可能性もある」(鉄道業界関係者)との声もある。