ゆる受験でオススメの男子校
一方、男子におすすめの学校はどうか。男子校は女子校に比べて数が圧倒的に少なく、選択肢は多くはないが、その中で西村氏は、聖学院と桐光学園を推す。
「聖学院は100年以上の歴史があるキリスト教系の男子校で、1学年が150人ほどのアットホームで面倒見の良い学校です。昔から英語教育には定評がありましたが、近年はレゴを使ったものづくり思考力入試でも注目されているように、プロジェクト運営を通して生徒が自分たちの力で探究し、体験する協働学習にも力を入れています。桐光学園の男子部も、以前より偏差値は下がっていますが、学習の面倒見がよく、GMARCH以上の私立大学を中心に多数の合格者を出しています」
瀬川氏は、獨協と日本大学豊山を薦める。日大豊山は日本大学の付属校の中で唯一の男子校である。
「獨協は130年余りの伝統があり、獨協医科大学と同じ学校法人が運営するため、昔から医師の家庭の子供が多く通っています。自由な校風で、学力面でも男子特有の成長曲線に合わせた着実なカリキュラムを組んでいます。日大豊山は日大への内部進学者が8割近くにのぼり、他の付属校に比べて内部進学が圧倒的に有利です。中高6年間は部活動などを思い切り満喫できるという点では良い選択だと思います」
「うちもゆる受験に挑戦したい」という家庭は、具体的に何から始めればよいのだろう。まずは日常的に読み書きと計算の習慣を身につけさせてほしいと両氏は口をそろえる。
「偏差値50程度の学校の入試問題は、標準的な学力を確認するオーソドックスな問題がほとんどです。私が家庭教師として指導するときは、初日に計算では九九や、四則計算のルール、分数と小数の変換、単位の換算、割合と速さの基本など教科書レベルの内容を正しく理解できているかを見ます。国語であれば、会話できちんと聞かれたことに答えられているかや、語彙力がしっかりあるかをチェックします」(瀬川氏)
「大手塾は頼れない」ゆる受験の勉強法
次に塾選びだが、西村氏は「残念ながら残り1年で引き受けてくれる塾はほとんどない」と言う。
「大手塾は進度が速く、6年生になるまで学校の勉強しかしていなかった子は授業についていけません。比較的ペースがゆるやかな日能研か栄光ゼミナールならギリギリなんとかなるかもしれませんが、10人以上の集団授業はきついでしょう。小回りが利く地元密着の中小塾や個別指導、家庭教師などに志望校を伝えて、基礎を丁寧に教えてもらうのが近道です」
受験教科は「国語・算数に絞り込んだほうが効率的」と西村氏は2教科型受験に特化する勉強を勧める。
「特に算数は学校の勉強と入試問題とのギャップが大きい教科なので、できれば10月ごろまでには『中学入試 でる順 過去問 計算合格への920問』(旺文社)といった計算問題集を1冊、さらに文章題については『小学高学年 自由自在 算数』(増進堂・受験研究社)で基礎レベルのみ例題の説明を読んで理解したうえで、同じシリーズの『小学高学年 算数 自由自在 問題集』の基礎問題をやっておくといいでしょう」
一方、4教科型の場合には、「理科と社会を基礎問題集『メモリーチェック』(みくに出版)でしっかり仕上げるように」と西村氏は言う。
「オーソドックスな問題がメインなので、基礎固めや問題演習が入試対策に直結します。できるだけ、標準レベルの問題を落とさないように学習していきましょう」(西村氏)
瀬川氏によると夏休みから晩秋にかけて、「四科のまとめ」(四谷大塚)を使って基礎固めを仕上げ、月半ば以降は過去問に取り組めるように進められたらベストだそうだ。
「冬休みから本格的に過去問を使い問題演習に入ります。ただし親は過去問を早めに入手し、出題レベルや傾向を確認しておくこと」(瀬川氏)ここに紹介した方法で攻略できるのは、オーソドックスな問題を出す学校のみ。同じ偏差値帯でも、出題傾向が独特な学校の場合、受験勉強のスタートを数カ月程度前倒しにして、対策の時間を取る必要がある。
「受験家庭はつい、偏差値にとらわれた学校選びをしがちです。実際には、手ごろで面倒見の良い学校もありますし、家庭ごとのスタイルに合った受験も可能です。ぜひ、ご家庭で無理のない“ゆる受験”を探ってみてください」(西村氏)