意識して「聞く」だけで差は開く

「なるほど、つまりこういうことですね」とたとえてあげ、「ということは、こういうことにもつながりますね」と、ときに新たな意味を付け加えて話を広げてみます。それらが芯を食った適確な返しであれば、相手は「この人は正しく理解してくれているな」という安心した気持ちになり、その後の相手のトークはスムーズになるでしょう。

齋藤孝『本当に頭がいい人の思考習慣100』(宝島社)
齋藤孝『本当に頭がいい人の思考習慣100』(宝島社)

これが仕事上の上司との会話や、ビジネスパーソン同士のやりとりであれば、「この人は要約する力が高い人だ」「頭のいい人だ」という評価につながるわけです。

このように、聞く力がつくだけで、思考力のレベルはずいぶんと上がります。日頃から「人の話は要約できるように聞く」と意識している人と、漠然と聞いているだけの人では、それだけで大きく差がつくことになるでしょう。ちなみに、要約できるということは、話の流れをズラすこともできるということです。

同じ話ばかり繰り返し、要領を得ない人に「こういうことですね」と軌道修正し、流れを操る力も備わるのです。

相手を安心させる「話を聞く姿勢」の正解

人の話を聞くとき、「姿勢」というのも実は大変に重要です。話し手に向かって自分の胸を向け、正対するのが基本です。話し手が右にいるなら、自分の身体も角度をちょっと右に向けて動かす。

シンプルな行為ですが、これだけで話し手の緊張はずいぶんとやわらぎ、より円滑なコミュニケーションが図れます。

講演会に呼んでいただくと、体育館のような場所にパイプ椅子が並べられているわけですが、たいていは垂直かつ平行にまっすぐ並べてあります。

そうなると、聞く側からまっすぐに前を見た場合、ほとんどの人の視線の先に私はいないことになります。理想としては、椅子は半円を描くように並べるのが最適でしょう。