【介護のお金に関する疑問①】

Q(上大岡トメ)お金さえあれば安心ですか?
A(FP黒田尚子)「お金」「情報」「ネットワーク」の3つが必要です

私の知り合いに「介護はお金で解決する!」と豪語している人がいました。「遠方に住む親に介護が必要になったら、老人ホームに入居させる。自宅にいたいと言うなら、介護保険の限度額を超えてプロに介護してもらう」と言うのです。それはある意味、ひとつの正解ではあります。

でも実際には、多少弱ったくらいでは「まだ施設には入りたくない」「他人を家に入れたくない」という高齢者は少なくありません。その場合、お金で解決できないことは案外多いと気づくかもしれません。

たとえば毎日のゴミ出し。ゴミ置き場が少し遠くて、足の悪い親にはゴミ出しがつらいという場合、お金より必要なのはご近所さんとのおつきあいです。お隣さんについでにゴミ出しをお願いしたり、地域のゴミ出しボランティアに依頼したりするほうが手っとり早いのです。買い物や調理を家政婦さんに依頼するより、近所のスーパーの宅配や、お弁当の配達兼見守りサービスのほうが受け入れやすいかもしれませんよね。そう考えたとき、必要になるのはお金だけでなく、情報とネットワークです。

もちろん、お金も重要です。特に要介護度が上がってくるとプロの出番は増えてきます。貴重なお金を効果的に使うためにも、情報が必要です。情報を得るためにも人的ネットワークは欠かせません。お金・情報・ネットワーク、この3つすべてが大事だということを、どうぞお忘れなく。

【介護のお金に関する疑問②】

Q(上大岡トメ)大した財産はないから介護後の相続もモメないよね?
A(FP黒田尚子)そう言い切れるのは「相続人1人、相続税がかからない」のみ

「相続問題や相続税なんて、わが家とは無関係」と思っている人も多いかもしれませんが、家庭裁判所の相続問題の相談件数のうち、約3割は相続額1000万円以下のケースです。

上大岡トメ『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(黒田尚子監修・主婦の友社)
上大岡トメ『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』(黒田尚子監修・主婦の友社)

なかでも典型的なのは、「遺産が実家とわずかな預貯金だけ」という場合。不動産は簡単に分割することができないので、きょうだいのうちの1人がその家を相続し、ほかのきょうだいに相当額を渡すことになるのですが、「渡す現金が用意できない」ということでトラブルになるのです。また、親と同居して介護も担っていた子どもが家を相続する場合、本人は「親の世話は全部自分がやったのだし、ここに住んでもいるのだから相続するのは当然」と思ったとしても、ほかのきょうだいがそう思わず相当額を要求される可能性もあります。

このようなトラブルを回避するには、介護の段階から問題点をうやむやにしないことが必要です。介護の役割分担がスムーズな家族は、相続問題もスムーズです。そうでない場合には、法的に有効な遺言を残してもらいましょう。

なお、遺産には「遺留分」というものがあります。もし、親が「遺産のすべてを長男に相続させる」と遺言状に記載されていたとしても、法定相続人(配偶者、子ども、孫)には最低限の額を受けとる権利があります。遺産の額が2000万円で、相続人が子どもだけの場合、遺留分は2分の1です。1000万円を長男が相続し、残りをほかの子どもが分けることになります。

遺言を残しておいたほうがよいケース
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