多様な人材の集まる米国では組織開発が必要
そして、次の段階で、分業した課題や仕事間の調整をどう行っていくかに関する意思決定がくる。最も卑近な例でいえば、指揮命令系統の設計である。または、部門間連絡やコミュニケーションの仕組みの決定といってもよい。この点で見ても、現場マネジャーは、日々、組織デザインの第二段階(=部下と上司や、部下間のコミュニケーションルートの確立)に関わっているといえよう。
いうまでもないが、分業がある以上、調整やコミュニケーションがないと、組織として目標を達成できない。したがって目標の達成のためには、調整のあり方は大切である。調整のよしあしによって、組織としての機能は大きく変わってくるからである。
やや大きなスケールになるが、ここ暫く、わが国では、多くの大企業、中堅企業が、事業部制やカンパニー制を推進した。これは分業に関する意思決定である。だが、その結果、事業部間の情報交換やシナジーがうまくいかなくなったという話を聞く。これは、調整機能の不全である。
やや話が教科書的になった。いずれにしても、組織デザインや組織設計に関する意思決定は、経営という観点でも、現場でのマネジメントという観点でも極めて重要である。ある意味では、デザインの仕方によって、組織の機能不全が起こってしまうのである。なお、組織デザインの詳細については、沼上幹著『組織デザイン』(日経文庫、2004年)を参照願いたい。名著である。
ただ、組織に関する経営学は、こうした組織デザイン論に加えて、同時に、組織開発論という分野を発展させてきた。なぜなのか。組織は、デザインすれば、自動的に機能するわけではなく、すでに述べた部門間のコミュニケーションをはじめ、多くの条件が成立して初めて機能するからである。
組織が持つべき多様な強みや、組織が機能するために必要なプロセスや組織としての働きが、効果的に機能するように、意図的につくりこんでいく作業が、組織開発なのである。組織のハード面とソフト面の違いだといってもよい。ソフトがないと、ハードは機能しない。
そして、組織開発が、伝統的に、対象としてきた組織の機能は、人と人のコミュニケーションや協働、目標へのコミットメントの基礎となる組織への信頼感、組織としてのまとまりなどである。