図にこうした意味で、開発のターゲットとなる組織としての能力を幾つか挙げておいた。これですべてではないかもしれないし、企業によっては、ほかにその組織に重要な能力があるだろう。だが、この7つは多くの企業で共通して求められる組織能力である。
さらに具体的には、ここでいう組織開発のプロセスは、5つの段階で構成される。(1)組織デザイン、(2)理念やビジョンの浸透、(3)人材開発(特に、内省による意識づけ)、(4)人と人の関係性のつくりこみ(共同体の構築)、そして、(5)リーダーシップの確保である。組織デザインの内容はすでに述べた、枠組みの構築であり、組織としての理念や価値観の浸透が次にくる。そして次が、人材の確保。さらに、こうした人材間の関係の構築。そして、組織開発の最後の鍵が、リーダーの確保である。
こう書いてくると、これまでの人材開発とそれほど違わないという印象があるかもしれない。だが、ここで注意しなくてはならないのは、ここでいう組織としての強みとは、人材一人ひとりの強みではないことである。組織開発は、人材開発で終わるのではない。図に挙げたような組織能力が確保されているかを目安に、人と組織をともに開発する総合的な動きが、組織開発だといってもよい。
経営者としては、単に人材開発だけではなく、組織の開発に意図的な投資をすべき時代になってきた。
(平良 徹=図版作成)