東電管内の電気の使用率が「供給能力の96%」に

また別の自民党商工族の議員はこう話す。

「菅首相は政策の実効性の面で無理があるとの周囲の声に耳を傾けない。すでに求心力を失った菅首相に付き合うつもりはない」

再エネ拡大を叫ぶ菅政権=官邸だが、足元では今年の年初と同様の厳しい電力事情が日本を覆っている。

7月19日の東京電力管内。17~18時の電気の使用率が供給能力の96%に達した。通常、使用率が95%以上になると、需給が「厳しい」と判定される。データを公表している19年以降で7月にこの水準を超えたのは初めてだ。8月に入っても1日からの第一週のうち、4日に95%、残る平日は93~94%と高い水準が続く。

夏場は電力需要が年間で最も強まるが、その一方で太陽光の発電量も増えるため、電力の逼迫ひっぱくはそう起きないとされる。しかし、今年の夏は綱渡りの状態だ。東電などは契約している発電所でトラブルが起きないよう発電事業者に常時呼び掛けている。

政府は火力発電所の稼働を「一時的な措置」として要請

さらに問題なのは太陽光の出力が落ちる冬場だ。供給力は本来なら想定する最大需要を3%は上回る必要があるが、22年1~2月は東電管内ではその余裕を持てない見通しだ。

この状況で東電や経産省が頼りにするのが、火力発電所だ。本来なら、脱炭素を進めるうえで、廃止を進めるべき存在の火力発電所だが、政府は休止中や点検予定の火力発電所の稼働を「一時的な措置」として全国の発電事業者に要請している。

JERA 碧南火力発電所
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ただ、老朽化や低い採算性からこの5年間に原発10基分にあたる1000万キロワットの石油火力などを削減してきた既存の発電事業者にとって、この要請に対する受け止めは複雑だ。「脱炭素といって廃棄を迫ってきたのに急に維持しろと言われても人繰りや資金面で厳しい。だれがその費用を負担してくれるのか」(西日本の大手電力)との声も上がる。

また、火力発電の主流である液化天然ガス(LNG)火力は需要期でない夏場にもかかわらず価格が高騰している。LNGのアジア市場のスポット(随時契約)価格は8月上旬時点で100万BTU(英国熱量単位)あたり16.9ドルと、1年前の5倍以上も高くなっている。夏場としては2012年以来の高水準だ。