アフガニスタンにとって中国は第2の貿易相手国
安全保障という最大の課題に続くテーマが経済問題となる。貿易、投資、インフラ建設という3分野いずれも、中国のプレゼンスは大きい。
中国商務部刊行の報告書「対外投資協力国(地域)別ガイド:アフガニスタン編(2020年版)によると、中国は2019年度に11億5700万ドルをアフガニスタンに輸出している。
電機製品、医薬品、機会設備、衣料品が主な輸出品目だ。アフガニスタンにとって中国は12億4700万ドルのイランに次ぐ、第2の貿易相手国である。イランとの貿易額は2015年をピークに減少しており、このままいけば最大の貿易相手国となるのも時間の問題であろう。
中国政府の統計によると、中国の対アフガニスタン直接投資はアムダリヤ盆地の油田やメス・アヤナクの銅山プロジェクトなどで、2019年末時点で累計4億1900万ドルに達している。現時点ではたいした金額ではないとはいえ、アフガニスタンが擁する豊富な天然資源の開発が進めば、メリットは大きい。
また、天然ガス・パイプライン建設、通信網・電力網敷設、道路建設などのインフラ建設についても、中国企業は数多く受注している。
国際支援によるインフラ建設プロジェクトは多いが、安全性を考えて参入には慎重な企業が多いなか、大胆にリスクを取る中国企業の存在感が高まっているという。
中国がイスラム武装勢力の標的になるリスクは高まる
もっとも米軍の撤退で、ビジネス人員のリスクも高まっている。米国が多額のコストを費やして維持しているアフガニスタンの治安に中国はタダ乗りしているとは、これまでも指摘されてきたところだ。米国なきアフガニスタンでどのように国民の安全を守るのか。
中国の大ヒット映画「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」(2017年)は、アフリカ亡国の内戦に巻き込まれた中国民間人を、元中国軍兵士と人民解放軍が救うというストーリーだ。
映画のラストには中国のパスポートの上に、世界のどこであろうとも中国政府は国民を守るとのメッセージが映し出される。愛国映画でありながら、中国映画興行収入歴代1位の大ヒットとなった同作だが、アフガニスタンでは映画通りとはいかないだろう。
本稿執筆中の8月20日、パキスタン南西部のグワダルで、中国人が乗った車を標的とした自爆攻撃が行われた。イスラム武装勢力の「バルチスタン解放軍」が犯行声明を出している。パキスタンの経済分野で中国の存在感は高まる一方なだけに、政府にダメージを与えるテロの対象にもなりやすい。
米軍なきアフガニスタンでも今後同様の構図となるだろう。中国の存在感が高まれば高まるほどに、標的となるリスクもまた大きくなる。