「一人っ子政策」の方針転換を迫られる中国
「近年、高齢化がさらに深刻化している。出生政策のさらなる改善を進め、それぞれの夫婦に3人目の出産を認める政策と関連支援策を実施する。これらの政策は、中国の人口構造の改善、人口高齢化に着実に対応する国家戦略、そして人的資源という天賦の優位を保持するために有利に働くものとなる」
中国共産党中央政治局は2020年5月31日、「出生計画の改善と人口の長期的な均衡ある発展に関する決定」(以下、「決定」)を決議した。冒頭の文章はその一節だ。
中国がいわゆる「一人っ子政策」から方針を転換したのは2013年のこと、両親のどちらかが一人っ子の場合には二人目出産が認められるようになった。その3年後には全夫婦に対し二人目出産を解禁。そして、今回の三人目出産の全面解禁へと、この8年で規制は次々と緩和されている。
段階的な制度変更は効果を確かめながらの慎重な態度と言うよりも、計画生育(出産抑制政策)を全面撤廃するふんぎりがつかず、ずるずるとひきずったと見るべきだろう。
出生率は日本以下の水準に
2020年における中国の合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は1.3と、日本の1.37を下回る危機的な水準にまで落ち込んでいる。本来ならば全般的な少子化対策に踏み切ってしかるべきだ。
「決定」では教育費や住宅費に対する配慮から若者の恋愛観、結婚観の誘導(従来は若い間は恋愛などせず勉学にいそしめというのが社会の風潮だったが、今後は習近平総書記の号令の下、恋愛バンザイへと変わるのだろうか?!)まで、広範な分野で少子化対策に取り組むとの内容が盛り込まれているが、それでも夫婦1組あたり3人までという形で、出産数制限そのものを撤廃するにはいたっていない。
現実問題として3人も子どもを作りたいと考えている中国人はほとんどいない。出産数制限を3人にしようが4人にしようが、あるいは撤廃しようが、たいした違いはない。
それにもかかわらず、出産数制限という制度そのものを維持したことは、中国が抱える病巣の深刻さの表れだ。なぜ、中国は出産抑制政策を始めたのか、なぜ少子化が深刻になってもやめられないのか。その理由を知るためには歴史をひもとく必要がある。