批判がすべて当たっていて、一理あると自分も納得できる内容のものだったら、素直に受け止め自分の糧にします。僕のブログには「教養がない」「語彙のバリエーションが少ない」という書き込みがよくあるのですが、自分で痛感していることなので「頑張らなくちゃ」と思います。あまり何度も書かれると気分はよくないですが(笑)。

一方、おっしゃることはわかるけれどちょっと違う、と思うものに対しては、アプローチ方法が2つあります。

ひとつは情理を尽くした反論を書くことです。「欧米の生命保険会社は喫煙者の掛け金を非喫煙者よりも高めに設定するのが普通だが、日本の生保はそういうことに消極的だ」といった内容をブログに書いたとき、「そんなことはありません」と現役の生保営業マンから訂正依頼が来たことがありました。

ネット上での誹謗中傷は年々増加中!
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ネット上での誹謗中傷は年々増加中!

そこで僕は、その人が勤務する会社のディスクロージャー資料を読み込んで、喫煙リスクを反映させている案件が全体の1割以下であること、それ以外の生保各社でも状況は大同小異であることを調べ、それを明記したメールを送りました。自身は喫煙リスクを勘案した保険商品を積極的に売っているのかもしれませんが、日本の生保業界全体を見ると違う、ということを僕は訴えたかったのです。

もうひとつの方法は、僕を批判する当の相手に直接会いに行ってしまうことです。僕の著書に対してことあるごとに批判しているブログがありました。作者が実名を公開しているうえに年齢が同じ、しかも勤務先がわかったので、ある日そこに電話して本人に「岩瀬です。いつもありがとうございます」と話し始めたら、さすがに驚いたようです。その後は食事をして意気投合し、遊びにも行く仲になりました。といっても、相変わらず彼のブログでは僕への批判がやみません。ただ顔見知りになってからは文章に僕への“愛”が増したように思います(笑)。

仕事がまさにそうですが、ネットに頼りきってしまうと、うまくいくこともいかなくなります。対面して話をするのがコミュニケーションの原点なのです。

※すべて雑誌掲載当時

(荻野進介=構成 相澤正=撮影)