商売仲間の対応に追われた散々な葬儀

Cさんの家族葬に対応する葬儀会社のスタッフは一人だけ。「家族葬のはずでしょう。参会者には親族で対応してください」と冷たく言われた。コロナ禍なのに、葬祭場の中で思わぬ「3密」ができてしまい、同じ時間帯に隣でやはり家族葬を営んでいた人から「少し静かにしてもらえませんか」と苦情が出た。あらかじめ香典は辞退し、返礼品も人数分しか用意していなかったが、商売仲間は当然のように香典を持参した。しかし、返礼品も会葬御礼のハガキすらもない。

香典のイメージ
写真=iStock.com/hachiware
※写真はイメージです

読経は短く済ませてもらい、出棺までの時間を長めにとってあった。通夜に間に合わなかった妹と甥に、出棺前に妹と甥しか知らない故人のエピソードを披露してもらい、泣き笑いしながら故人にゆっくりとお別れするためだった。しかし、次々にやってくる商売仲間に「家族葬なので、香典は辞退しております」「最期の顔を見てやってください」と言い続けるだけの、散々な葬儀になってしまった。

弟は言う。「『来てやったぞ』とばかり、焼香してそそくさと帰る人が多い中に、何人か『火葬場まで行って、骨を拾ってやりたい』という同業者がいたので、さすがにそれは勘弁してもらいました。火葬場に行くマイクロバスも用意してなかったですから。ただ、一人だけ、棺の横で『Cさん、本当に世話になったなぁ』と往時を振り返り、兄の仕事上の秘密を披露してくれた同業者の方がいました。弟の自分ですら知らない兄の性格がうかがえるエピソードで、その話を聞けたことだけが、急にあわただしくなった葬儀の中のちょっとした救いでした」

家族葬と言われたら素直に引き返す

Cさんが自分の人脈を軽く見たのか、家族葬だと断る遺族に、無理やり会葬を求める同業者の常識を疑うべきなのか。Cさん自身は、死後に郵送してもらうつもりで、生前にお世話になった感謝の念を記し、葬儀に呼ばなかった非礼を詫びる「死の挨拶状」を作りかけたところだった。思いがけず急に症状が悪化して亡くなってしまったという。

こうした場合に対策はあるのか。

「家族だけでお別れしてほしいというのが故人の固い遺志ですので、参列はどうかご勘弁ください。その代わり、コロナが落ち着いたら、ささやかながら『Cをしのぶ会』を開きますから、ご参加ください」と、とっさに言えれば満点の回答だろうか。

実際には、同業者と交流もなく、初めて話す弟にそれを求めるのは酷だろう。「家族葬ですのでご遠慮ください」と断られたら、葬儀後に自宅に出向いて改めてお別れするなど、別の機会を模索してもらうしかないのだろう。

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