肥満が体の“質”を変えていく

コロナ禍で短期的に体重が増加したとしても、また以前のような生活に戻れば、運動量が増えて元の体重に戻るのではないか──と考えた方がいるかもしれません。

しかし、厳しいことを言うようですが、「自粛で動かなくなったから太った。だから、また動けばせられる……」というのは、甘い考えと言わざるをえません。

なぜなら、一度体重が増加すると、身体状態が以前とは大きく変わってしまうからです。簡単に言えば、「太る反応が起こりやすく、痩せる反応が起こりにくい」体に作り替えられてしまうのです。

カギを握るのは、「筋肉量」「ホルモン」です。

私たちの身体は、「使わないものは衰える」ようになっています。わかりやすいところでは、「お酒をよく飲んでいた人も、しばらく飲まないでいるとお酒に弱くなる」ことなどが当てはまります。筋肉も、使わないでいるとどんどん衰え、筋肉量が減っていきます。

体重計に乗る女性
写真=iStock.com/fabrycs
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つまり、運動量が減ると、筋肉量も減ってしまうのです。その体で筋肉量が多かったときと同じ運動をしても、消費するエネルギー量が少なくなっているために痩せづらくなっている、というわけです。

悪性脂肪の「内臓脂肪」が悪さをする

肥満が引き起こす体の質の変化は、もう1つあります。それは、腹部の内臓まわりにつく悪性脂肪である「内臓脂肪」の増加です。

内臓脂肪は運動量が減ったとき、比較的短時間に増えてくるのが特徴で、しかも「運動量を戻せば体重も戻る」を成り立たなくさせる大きな要因になるのです。

内臓脂肪は、ホルモンのような作用を持つ数種類の「アディポサイトカイン」という物質を分泌することで、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効果を阻害することがわかっています。そのため、血糖値が上がりやすくなることから、さらにインスリンの分泌を乱発し、体の代謝を狂わせ、脂肪の燃焼を阻害して痩せづらくさせてしまいます。

アディポサイトカインの中には、血圧を上げたり、血管を詰まりやすくしたりする作用を持つものもあります。また、内臓脂肪に入りきらなかった脂肪が、今度は心臓、肝臓、膵臓すいぞうなどの臓器に異所性いしょせい脂肪」としてたまってしまうと、それらの臓器に炎症を引き起こすこともあります。

お腹まわりにつく脂肪は、単に見た目が悪くなるというだけでなく、病気に直結する危険度が高い、つまり、体重増加に伴い、さまざまな病気を発症するリスクが高まるということを頭に入れておいてください。