“たかが肥満”で死亡率が高まるコロナ禍
多少体重が増えたとしても、今までは「いやー、最近太っちゃったなあ……」と気楽に構えていられました。しかし、パンデミックの渦中ではそうもいかなくなってきました。というのも、肥満は新型コロナ感染後の重症率、死亡率を高める要因となることがわかってきたからです。
アメリカのある調査によると、新型コロナと診断された6916人を解析したところ、BMI(ボディマスインデックス)が18.5~24の患者と比較して、死亡リスクがBMI40~44の人は2.68倍、BMI45以上の人は4.18倍高かったことが明らかになりました。
また、イギリス人を調査した大規模なオックスフォード大学の研究では、BMI23以上で新型コロナによる入院が増加し、BMI28以上で死亡が増加した、と報告されています。BMIは22が標準体重の数値ですので、それより少し重いだけで入院が増加した、という結果です。
命を守るための自粛で命が縮む
私が健康診断を行う中で、体重増加が見られる方からよく聞くのが、テレワークで運動量が大幅に減った影響です。とくに営業を行っていたビジネスパーソンには、パンデミック前は外回りの仕事を毎日行い、よく歩く生活をしていたものの、テレワークに入ってからというもの運動量が激減し、体重増加が必ずといっていいほど起こっています。
実際に1日の歩数を調べた調査でも、それを裏づける数値がはっきりと出ています。
コロナ禍以前の日本人の平均歩数は、6322歩でした(平成29年「国民健康・栄養調査」)。ところが、パンデミック後にある企業が行った調査によると、回答があった2万7018人のうち、自粛要請期間中(2020年2月末~3月)、1日の平均歩数が3000歩未満の人が20.1%、緊急事態宣言期間(同3月末~4月2週目)では28.4%と、全体的に1日の平均歩数が減っていることが明らかになりました。
自粛→肥満→重症化・死亡リスク上昇…
自粛生活によって歩く機会が減り、趣味でスポーツをしていた方、ジムへ通うことが習慣だった方は、その機会が奪われてしまいました。読者の方にも思い当たるところがあるのではないでしょうか。
そのうえ、各種の制限による閉塞感などのストレスから、過食に走ってしまっている人が少なくありません。そもそも自宅でテレワークをしている人は、手を伸ばせばいつでも食べ物がある環境のため、食事量や間食が自然と増えてしまいます。
これらのさまざまな要因が重なり合うことで、多くの方が体重増加を加速させています。
パンデミックから身を守るための自粛生活が、肥満を呼び、重症化や死亡リスクの上昇へ……という流れを生んでいる、という実に皮肉な結果です。