子供時代から研ぎ澄まされた味覚

【堀江社長】そこは親に感謝していますね。私が子供の頃は、うま味調味料や冷凍食品が普及し出した時代です。ところが母親は、それらを一切使わない人だった。だから私は味の本質か分かる味覚を持つことができました。何も添加物が入っていないものを食べると、スーッと喉元で味が切れる。一方、添加物が入っていると、喉元で味が引きずられる。親のおかげで、「味の本質を検知する味覚」をもつことができました。

【寿司リーマン】小さい頃の食生活が、今のスシローのうまさを背負っているんですね。

スシロー店内
撮影=加藤慶

【堀江社長】あとは、とにかく「すしを何カン食べたか?」ですね。先代社長の豊﨑賢一の部下だった時代には、山のように食べさせられました。うまいすしも、そうでないものも、とにかく食べる。食べた数が増えれば増えるほど、「味覚データベース」が自分の中にたまっていきます。

まず、試食の時に、そのすしの味がこれまでの人生の中でどの位置にいるかを考えます。次に「で、これナンボなら出せる?」と考えて、その商品の味と値段が合格かどうかを見極めているんです。

【寿司リーマン】確かに味だけでなく、値段も重要ですよね。

【堀江社長】「相場がこうだからこの値段」っていうのは商売として全然面白くないじゃないですか。ウチはどこまでいっても、「このすしが100円でお客さまがうれしいかどうか」が勝負なんです。

すしをひたすら食べて体重が25kg増加

【寿司リーマン】これまで堀江社長はどれくらいの数のすしを食べてきたんですか?

【堀江社長】いや~、仕入部にいた頃は、体重が70kgから95kgまで増えました。びっくりするくらい食べましたからね。今は現場を離れたので、10kg減量しました。

【寿司リーマン】それだけ食べてもすしって食べ飽きないですよね。

【堀江社長】そう。「満腹でも食べられるすし」こそが本当にうまいすしなんです。スシローが目指しているのは、「満腹でも食べられるすし」です。1日に5~6軒店舗巡回することも多いのですが、最後のほうになってくるともうおなかパンパンです。でも、その店舗のすしがうまくて店内の雰囲気がよければまだ食えるんですよ。そうしたところも味の判断基準になりますね。

【寿司リーマン】堀江社長がスシローで一番好きなネタはなんですか?

スシロー店内
撮影=加藤慶

【堀江社長】天然インド鮪の中トロですね。とにかく脂が甘い。「魚のくせに甘い」っていうのが、たまらなく好きなんです。

【寿司リーマン】スシローのすしは直感的にうまいです。いや、「うまい」というよりも「うまっ!」というガツンとワイルドな感じです。