ビジネスセンスを磨くにはどうしたらいいか。経営学者の楠木建さんは「エクセルや英会話を学習してもビジネスセンスは身につかない。私は自分の娘が仕事を始めるときに、『機嫌よく挨拶を欠かさない』『できる人の仕事を見る』『顧客視点で考える』というビジネスセンスに関わる3つのアドバイスをした」という――。
※本稿は、楠木健、山口周『「仕事ができる」とはどういうことか?』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
新卒の娘に伝えた三つのアドバイス
【楠木】僕の娘が学校を卒業して仕事を始めるとき、どうせ人間は三つぐらいしか同時に意識してできることってないので、毎年三つずつアドバイスをしようと思って、1年目に次の三つを挙げたんです。
一つ目は「常に機嫌よくしていて挨拶を欠かさない」ということで、これはものすごく大切なことだと思っています。
【山口】それはまさしくコンピテンシーですよ。『幸福論』を書いたアランも「上機嫌」を最高の美徳として挙げてますからね。
【楠木】1年目は知らない人でも誰でも「おはようございます」「ありがとうございました」、何か言われたら「はい」。もうこれが最初に必要な能力の8割ですね。そして二つ目が「視る」ということ。
「これは!」と思う仕事ができる人を決めてずっと「視る」。「視る」というのは、漫然と眺めているというよりは自覚的に視る、“視破る”というニュアンスです。
それで「なんでこの人はこういうことをこの局面でして、なんでこういうことはしないのか」ということを、答えがわからなくても常に考えていろと。もう全部が文脈に組み込まれていることですから。
そして三つ目が、僕はこれ、仕事の基本だと思っているんですけど、「顧客の視点で考えろ」ということ。取引先というだけではなく会社の中にもお客さんはいて、「相手が自分に何をしてもらいたいのか」「あの人は何を欲しているのか」ということをまず考えてから、それに向けて仕事をするのがいい。
この三つを最初の年に言ったんですね。