東京都の検査数が圧倒的に少ない
政府の「無策ぶり」が一段と鮮明になってきた。
菅義偉首相は7月30日に記者会見を開き、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を東京と沖縄の2都県から、神奈川・埼玉・千葉・大阪を加えた6都府県に拡大することを表明、8月2日から実施された。ところが「不要不急の外出自粛」といった従来の要請を繰り返すばかりで、国民の間に「危機感」はまったく共有されていない。緊急事態宣言も名ばかりの状態になっている。
その結果、人流の抑制は進まず、感染力の強いインド由来の変異株「デルタ株」が急速に拡大。新規感染確認者数はまさに「爆発的」に増加している。記者会見翌日の7月31日には東京都の新規感染確認者数は4058人と過去最多を記録。8月2日には神奈川県で1686人と過去最多、5日には埼玉県で1235人、東京都で5042人といずれも最多を更新した。感染爆発は一向に収まる気配を見せていない。
深刻なのは東京都の7日間移動平均の検査数が1万2000人ほどにすぎず、陽性率が20%を超えていること。検査数が圧倒的に少なく、おそらく無症状の感染者が相当数市中に広がっているとみられることだ。政府は早い段階で保健所の人員不足を理由に感染源を探る疫学調査を事実上断念、濃厚接触者の定義を狭めて検査数を抑える対応を取ってきた。海外諸国が検査の徹底で感染源を突き止め、ウイルスの封じ込めを目指したのとは対照的だ。東京都の陽性率を見る限り、いまだに発症者とそのごく周辺しか検査していないことがうかがえる。
百貨店、選手村…政府の無策による「人災」ではないか
市中への感染拡大を如実に示しているのが、人の集まる場所での突然のクラスター発生だ。
大阪梅田の阪神百貨店本店で販売員の間でクラスターが発生。7月31日から2日間全館臨時休業に追い込まれた。感染者は8月4日時点で128人に達した。東京・JR新宿駅の商業施設「ルミネエスト新宿」でも店舗の従業員ら59人の感染が確認され、8月4日に臨時休業して一斉消毒した。
無観客開催に踏み切り、「安全・安心な大会を実現する」(菅首相)としてきた東京オリンピックも、開幕以降、連日感染者が確認されている。8月4日にはついに選手村でクラスターが発生。大会関係者の感染者は累計で350人を突破した。
こうした感染爆発は、デルタ株の水際対策の遅れなど、政府の無策による「人災」の色彩が強いが、今回も政府が打ち出したのは驚くべき対応だった。