「一体政府は何をやってきたのか」

こうした問題は早くから指摘されてきた。

1月13日に2度目の緊急事態宣言を発出した時の菅義偉首相の記者会見でのことだ。記者からこんな苦言をぶつけられた。

「総理、今日、会見を伺っていると、基本的に国民にいろいろ協力を求めるというお話をずっとされてきましたが、もう一つ我々が是非知りたいのは、その間、一体政府は何をやってきたのか」

半年以上たった今、この発言を繰り返したい気持ちの国民は多いに違いない。記者氏は、その上で、こんな質問をした。病院の病床を新型コロナ患者用に転換するのは病院任せで、お願いするしかない状況だが、都道府県知事に強制力を持たせるような医療法などの改正は政府のアジェンダに入っていないのか、というものだった。

これに対して菅首相は「ベッドは数多くあるわけでありますから、それぞれの民間病院に一定数を出してほしいとか、そういう働きかけをずっと行ってきているということも事実であります」と述べるにとどまった。

病院のベッド
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「ベッドは数多くある」のは事実だが…

菅首相が「ベッドは数多くある」と言ったのはウソではない。この記者会見の後、塩崎恭久・元厚労相が自身のブログで、問題点を暴露した。

「報酬面でも『特定機能病院』として優遇され、人材も豊富でありながら、22もの大学病院が重症患者を1人も受けていなかったり、今でも法的に厚労大臣が有事の要求ができる国立国際医療研究センターが重症患者をたった1人しか受けていない状態を放置していることの方が問題だ。ちなみに東大病院には約1000人の医師がいるが、重症患者受け入れはたった7人だ(いずれも、1月7日現在)」と数字を上げて批判した。その上で、「知事と厚労大臣に重症・中等症者の入院につき、大学病院、公的病院等に対し、要請と指示ができるよう明確に法定するとともに、そうした受け入れ病院への公費補助、および他の医療機関からコロナ中核施設に一時的にサポートに入る医師の身分保障などを明確に規定すべきだ」と書いていた。

だが、結局、状況はその後もまったく変わっていない。政府は目の前の感染状況に右往左往するばかりで、抜本的な制度整備を行っていないのだ。このままでは、感染者の激増によって、着々と医療崩壊への淵へと押し流されていくことになるだろう。