聴かれるだけでなく実現する若者世代の声

2015年の諮問会議では、若者協議会の大きな関心事である地方選挙における16歳選挙権導入や公共交通機関の無償化などが議題として扱われた。若者協議会が、公共交通機関をすべての若者が無償で利用できるようにすべきと主張するのは共生社会の実現と正義のためだという。保護者に経済的に依存している若者もいるので、裕福な家庭で育った若者と、そうではない家庭で育った若者の間に格差が出てしまう。若者協議会のある若者はこう主張する。

「大人は自分の人生を自由にできますが、若者は大人ほど簡単に経済力をすぐに付けることができず、街や学校に閉じ込められがちです。だから若者が自由に移動できるようにする必要があります」

意見をする若者協議会の若者
写真提供=Edvin Johansson
意見をする若者協議会の若者

さらに、市内を自由に移動できることは、余暇・文化の活動を享受する権利の実現に不可欠だと付け加えた。若者協議会は、新たな交通計画づくりにも参画しており、ヨーテボリのすべての若者が学校の近くのバスや路面電車を無償で利用できるように働きかけた。

その結果、平日19時から22時まで若者の公共交通機関の無償利用と「夏休みカード」が実現した。夏休みカードとは12歳から17歳の若者が、夏休み期間中に、市のバスや路面電車を自由に利用できることを許可するカードだ。このように若者の提案が、単に「聴かれる」だけでなく実現に至る。これこそ「若者の社会への影響力を高めること」である。

このように地域社会に若者世代の声を反映させ、影響力を高めるのが若者協議会である。自分たちで活動を組織し、政治家や行政関係者などとの対話集会を開いたり、請願書を送ったり、時にはデモ行進などをして、地域社会に影響を与える活動を、若者自らの手でやっていく。若者による、まちづくりの活動そのものである。

若者は「参画」と「表現」によって民主的な権利を実現する

2016年のスウェーデン全国若者協議会の代表であったガブリエル・ヨハンソンさん(当時21歳)もまた、そのようにして活動を始めた若者の一人だ。

「政治には興味があったけど、政党活動には興味がなかった」

そう答えるガブリエルさんにとって、若者協議会の活動は、「政治っぽさ」や「政党色」を気にせずに社会参画ができる絶好の機会であった。2016年の夏に話を伺ったとき、ガブリエルさんは若者が政治に影響を与えて民主的な権利を実現する方法を2つ教えてくれた。1つは、「参画」だ。例えば、市議会を傍聴すること、請願書を書くこと、政治家や政策形成者と直接会うことなど、つまりは社会に自ら参画することである。もう1つは、「表現」だ。これには、メディアへの発信、公の場でのスピーチなどが該当する。最近では、スマートフォンのアプリを用いた手法もあり、「Speak App」というハーニンゲ市で開発されたアプリでは、市政への質問や提案が簡単にできるようになっている。このアプリは若者を中心に人気を集めた。

★ヨーテボリ市若者協議会 Göteborgs Ungdomsråd
【対象年齢】12~17歳
【会員数】101人(メンバー81人、理事20人)
【理念】
●若者が若者協議会、地域の行政、政治家に影響力を発揮できるようになること
●若者自身が話し合う内容を決めること
【予算】年間350万円
【組織】学校委員会、人道委員会、文化・余暇委員会、都市委員会、活性化委員会
【主な活動】
●政治家や行政への提言・質問・意見具申
●活動の企画・実施
●委員会の開催
【最近の活動】
●地方選挙における16歳選挙権の導入の提言
●若者の公共交通機関の時間限定の無償利用可(実現)
●ウォータースライダー祭りの開催(2015年)

全国の若者協議会を取りまとめるSUR

ガブリエルさんの肩書きは「スウェーデン全国若者協議会」の代表である。これは、スウェーデン語表記ではSveriges Ungdomsråd(SUR)で、英語訳をするとSwedish Youth Councilである。この組織は、先述した各地域で活動する若者協議会を、取りまとめる全国組織である。首都・ストックホルムに本部の事務所を構え、全国の若者協議会を会員団体とし、各地の若者協議会の活動をサポートをしたり、意見を取りまとめる役割を担う。

2016年度全国若者抗議会代表(2016年度)のガブリエルさん
2016年度全国若者抗議会代表(2016年度)のガブリエルさん

SURの本部の理事会は、全国の加盟している若者協議会から12人が選挙で毎年選出される。その中の5人は有給の職員で、代表・副代表、組織取締役、管理人、渉外から構成される。選ばれる人は25歳が上限なので、若さが保たれる仕組みになっている。ガブリエルさんももちろん選挙で選ばれて代表になったが、任期は1年で、1年後には代表の座を退いている。

気になるのはこれらの多様な活動を支える基盤となる財源である。SURは、加盟している若者協議会からの団体会費に加えて、スウェーデンの若者政策を管轄する政府機関のスウェーデン若者・市民社会庁の若者団体向けの助成金も財源としている。この財源を、スタッフの給与、事務費、リーダーシップ研修などに充てているので、持続可能な運営ができる。