福祉の国として知られる北欧・スウェーデンでは、若者の投票率が85%と日本の約30%を大きく突き放している。環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんも輩出したスウェーデンでは、なぜ政治に関心を持つ若者が多いのか。ヨーロッパの若者政策を研究する両角達平さんは「若者協議会という団体で若者世代の声を反映させ、まちづくりを若者自らの手で行う環境が整っている」という――。

※本稿は、両角達平『若者からはじまる民主主義』(萌文社)の一部を再編集したものです。

12~17歳の101人の若者が約350万円の予算を自由に使える

スウェーデンの西にある人口規模第二の都市ヨーテボリ市には「若者協議会(Ungdomsråd)」なる取り組みがある。若者協議会は、ヨーテボリにいる12~17歳の101人の若者から構成される。10の行政区に分かれるヨーテボリ市のすべての区からネットの選挙で選ばれた若者である。

2015年夏、ヨーテボリ市若者協議会は毎夏に開催される「ヨーテボリ文化祭」で、140メートルのウォータースライダーを借りようと提案。しかし、このウォータースライダーのレンタル料は決して安くはなかった。

ウォータースライダー
写真提供=Paula Aivmer
ウォータースライダー

ヨーテボリ市若者協議会は毎年30万スウェーデンクローナ(約350万円)の予算が市から充てられており、活動費として使うことができる。しかし、ウォータースライダーはこの半分の額に及ぶものであり、ヨーテボリ市若者協議会の「12万円以上の出費がある場合は、自治体からの許可が必要」という定則に従う必要があった。そこで若者協議会は、ウォータースライダーを借りる目的を「ヨーテボリのすべての若者が出会う場となり、若者の社会統合を促進し、若者協議会の活動を広めること」と掲げて、ヨーテボリ市と協議をした。最終的には、予算の許可が下り、提案・実現に至った。

このように若者協議会では、理事になった若者が比較的自由に計画を立て、予算をもとにオリジナルな企画を実際に実現させている。

若者協議会の運営を担う理事は、毎年11月にインターネット上で開催される選挙で選ばれる。年に5回の定例会があり、小規模な会議は毎週開かれる。会議では、自分たちがやりたいこと、今この街で課題となっていることなどを話し合う。5つの委員会で話し合われたことは、若者が決定し、行動を主導する。若者協議会はヨーテボリ市に設置されているので、市役所のコミュニケーション部に属する専従の職員も配置される。職員が若者協議会をサポートし、活動の実現を支援している。

若者協議会の設置はヨーテボリ市の議会(Kommunfullmäktige)により、2004年に決定された。ヨーテボリ市が若者協議会と積極的に連携する形を取ったことにより、市議会に議席を持つすべての政党の市議が、若者協議会と直接会合をする義務が命じられた。そのような機会のひとつに諮問会議がある。諮問会議とは、若者協議会が特定の課題について市議らと意見交換をする会議である。