五輪を盛り上げたいが、新型コロナも無視できない
実際、オリンピックが始まってから、テレビではその中継に多くの時間を費やしている。日本勢のメダル・ラッシュが続いていることも大きい。
それでもやはり、報道機関である以上、新型コロナウイルスに関する出来事を完全に無視することもできない。7月27日以降、東京都などで新規感染者数が過去最多を記録すると、控えめではあれ、それなりに報道は行われた。
そのため、全体としてはオリンピックを盛り上げたいという意向がきわめて強く伝わってくるものの、コロナ関連のニュースではオリンピックの影響が語られるなど、それに徹しきれない状況が続いている。
そうしたあいまいさがもっとも顕著なのが、開催中止を社説で訴えた信濃毎日新聞、西日本新聞、朝日新聞などのメディアだ。とりわけ朝日新聞の場合、中止を訴えながらも、オフィシャルパートナーを降りることもなく、競技の報道も続けていることから、ネットを中心にその「矛盾」を指摘する声は根強い。
どう行動しても批判されるのがマスコミ
オリンピック開催を支持する側からみると、人びとをテレビに釘づけにして感染拡大を防いでいるオリンピックが、コロナとの関連で語られるのは許しがたく思える。逆に、開催に反対する側からすると、さまざまなリスクや問題を隠蔽してオリンピック翼賛体制をつくりあげ、お祭りムードで緊急事態宣言の効果を弱めてしまっているようにみえる。
両者に共通するのは「マスコミはけしからん」という主張だ。
ネット上では、マスコミがどのように行動しても「けしからん」という声が散見される。たとえば、大規模災害が発生した際、記者が被災地に乗り込むことで報道被害を生じさせるというのは、いまでは定番になった批判だ。
他方、2019年に千葉県南部で大規模な台風被害が発生した時のように、マスコミによる被害状況の報道が遅れると、それはそれで批判は起きる。さらに、ツイッターなどで被害現場の写真や動画を上げているユーザーにマスコミが接触を試みている様子もしばしば揶揄の対象になる。「情報は自分の足で拾ってこい」というわけだ。